反抗期の時に見た怖い夢と現実 2/2

ケーキ

 

そして家に入った。

 

後ろに出刃包丁を隠して、

まず父の後ろに忍び寄る。

 

その時、弟の声がした。

 

「お兄ちゃん、

何持ってるの?」

 

しまった!バレた!

 

俺は焦り、とっさに父を

メッタ刺しにしたのだ。

 

父は、のっぺらぼうの

顔のまま、

 

背中から大量の血を流し、

死んだ。

 

のっぺらぼうだから、

死んだ時の表情は見えない。

 

苦痛は少し軽減した。

 

俺は少し恐怖心もあったが、

 

殺ってしまったプレッシャー

に勝てず、

 

続いて弟もグチャグチャに

刺して殺した。

 

弟は少し足をジタバタして、

それから息絶えた。

 

そして俺は、

 

一番憎たらしい母がいる、

台所へ向かう。

 

母は背を向けて、

また何か作っている。

 

俺は憎しみを込めて、

母の背中をザクッと刺した。

 

母は声を上げず、

 

震えながらゆっくりと

振り向いた。

 

・・・え!?

 

のっぺらぼうじゃない・・・

母の顔だ・・・。

 

母は苦しそうにして、

 

俺にただ一言残して、

息絶えた。

 

「ごめん・・ね・・・」

 

その台所には、

大きなケーキが一つ。

 

真ん中に乗っている

プレートには、

 

『たんじょうび おめでとう』

 

と、母らしい乱雑な

繋げ字で・・・。

 

俺は急いで

父たちの所へ行った。

 

父も弟も、

のっぺらぼうなどでは無く、

 

何が起きたのか

よく分からないような表情で、

 

何か悲しそうに、

 

口から血を流して

死んでいた。

 

弟の手には、

 

まだスイッチが入ったままの

思い出のゲームボーイが、

 

電子音を鳴らしながら

動いている。

 

「うわあああ!」

 

俺は叫んで泣き崩れた。

 

俺は、ただ一つの

大事な家族を・・・

 

俺の手で・・・。

 

俺は頭を抱え、

顔を手で覆った。

 

涙が止まらなかった。

 

俺が見ていた顔は

幻覚だったのか?

 

本当は、みんなこんなに俺を

思ってくれてたんじゃないか?

 

俺は気付くのが遅すぎたんだ・・・。

 

そして目が覚めた。

 

俺はやっぱり泣いていた。

 

一瞬焦って

すぐ居間に行ったら、

 

いつも通り、

家族全員いる。

 

・・・良かった。

 

俺は、何て夢を

見てしまったんだ。

 

それから反抗期も去り、

家族を嫌う事は無くなった。

 

しかし、その2年後、

 

母が急に発作で

亡くなってしまった。

 

何と、その日は偶然にも、

俺の誕生日だった。

 

そして、母が死ぬ直前まで

作っていた手作りケーキを、

 

父に見せてもらった。

 

そのケーキの真ん中に

置いてあるプレートには、

 

『たんじょうび おめでとう』

 

と書いてあった。

 

そのケーキは、

 

あの夢に出てきたものと、

全く同じものだったのだ。

 

何か分からないが、

物凄い寒気がした。

 

ちなみに、父と弟は、

まだ生きている。

 

(終)

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