「ねぇねぇ、ともっち、あそぼ~」
これは、俺が3歳の時の話。
当時、俺は母の事をいつも「ママ」と呼んでいた。
しかし突然、母の顔じっと見て、「ねぇねぇ、ともっち、あそぼ~」と言ったそうだ。
その時、親父も母の横にいて、何だ?と思ったそうだが、母がそれを聞いて凄く動揺して泣き出してしまい、さらには俺もつられるかのように泣き出したらしく、それは異様な光景だったという。
その後、親父が母に聞いた話がこうだった。
母が小学生の時に親友がいたそうだが、10歳の時に交通事故で亡くなってしまい、その子が母の事を「ともっち」というあだ名で呼んでいた。
ちなみに、母親の名は智代。
母曰く、自分のことを「ともっち」と呼んでいたのはその子だけだったので、突然俺がそう呼んだので驚いたのと同時に言い方も似ていたらしく、その子の事を思い出して凄く悲しくなって泣いたそうな。
結局、俺がそう呼んだのはその一度だけで、それからはママと呼んでいたらしい。
当然ながら、俺にはそんな記憶は全くない。
物心がついてから、この話を事あるごとに聞かされて多少うんざりしているが、たまに母の事を「ともっちー」とからかうと、「言い方が違う」と返される。
(終)