戦場から生き延びて村に帰ってみたら

兵隊

 

これは、老人ホームの爺さまから聞いた『戦争』にまつわる話。

 

爺さまは若い頃、海軍にいた。

 

ただ海軍といっても、爺さまは艦隊勤務ではなく陸戦隊といって、陸上の戦闘を担当する部隊にいた。

 

爺さまのいた陸戦隊は開戦から南方に進出して、終戦までフィリピンにいたらしい。

 

ある日、爺さまの小隊に新しい小隊長がきた。

 

爺さま曰く、この小隊長さんはSBSとかSEALsのような精鋭部隊の出身で、厳しい訓練を課す人だった。(SBS=イギリス海兵隊の特殊部隊、SEALs=アメリカ海軍の特殊部隊)

 

ただ訓練は厳しくても、非常にひょうきんで親しみやすい人だったとも言っていた。

 

特に小隊で一番若かった爺さまは、小隊長さんにえらく可愛がられた。

 

なんでも、小隊長さんには少し年の離れた弟がおり、爺さまとは年が近かったかららしい。

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奴らは絶対に許せない

その後、ミッドウェー海戦を境に形勢は逆転し、日本軍は米軍にどんどん追い詰められ、ついにフィリピンにまでやってきた。

 

上陸してきた米軍に爺さまの小隊も勇敢に応戦したものの、いかんせん戦力差が大きく本隊とも逸(はぐ)れた為、ジャングルに後退しゲリラ戦を仕掛けた。

 

ジャングルでのゲリラ戦は過酷そのもので、マラリアや餓えで小隊の隊員も何人も死んだらしい。

 

爺さまも何度か三途の川を見かけたらしいが、その度に小隊長さんや他の隊員さんに助けられてなんとか生き延びた。

 

結局フィリピンは米軍に制圧され、爺さまたちは紆余曲折の末に米軍の捕虜になり、そのまま終戦。(抗日ゲリラに捕まったとか何とか言っていたが詳細は不明)

 

その後、戦時の事後処理やらなんやらで2~3年フィリピンにいた後に復員し、小隊の人ともそこで別れた。

 

そして、ここからが本題になる。

 

爺さまは復員してから、生き残る為に家族を養う為に必死で働き、気づくと復員から10年近く経っていた。

 

生活にも少し余裕が出てきて、かつての小隊の人に会いたくなり、伝手(つて)を辿って消息を調べ会いに行った。

 

ところが最後の一人、小隊長さんの行方だけは全く知れなかった。

 

そこで爺さまは、かつて一度だけ聞いた小隊長さんの故郷を訪ねてみた。

 

そこで小隊長さんのお兄さんに会うことが出来たのだが、終戦後数年で失踪したと言われた。

 

お兄さんが言うには、小隊長さんは復員後すぐに実家に帰ったそう。

 

ところが、フィリピンで本隊と逸れた為か、小隊長さんは戦死扱いされていた。(余談だが、爺さまも戦死扱いされていたらしい)

 

さらに、小隊長さんが可愛がっていた弟さんは、小隊長さん戦死の報を聞いて、「兄ちゃんの仇を討つ」と言って海軍に志願し、終戦間際に空襲で亡くなったらしい。

 

これだけでも十分に辛かったはずだが、村では『占領軍は米兵をたくさん殺した日本兵をかくまった日本人を殺す』という噂が流れ、小隊長さんは村八分にされた。

 

ただただ日本の為に戦って、何度も修羅場をくぐって、村に帰ってみたら幽霊扱いされ、可愛がっていた弟は戦死、挙句に村八分。

 

お兄さんは小隊長さんをかなり気遣ったらしいが、ある日に小隊長さんの住む離れを見に行ったら居なくなっていたという。

 

その後も爺さまは様々な手段を使って小隊長さんの行方を追ったものの、結局は分からなかった。

 

爺さまももう亡くなったらしいが、この話を俺に聞かせてくれた後、この小隊長さんの行方が分からなかったことが人生唯一の未練であることと、「戦後ある意味仕方がないと言えば仕方がなかったのかもしれないが、国の為だなんだと言って笑顔で送り出し、生きて帰って来たら石を投げてきた奴らは絶対に許せない」と言っていた。

 

(終)

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