かえるのうた 3/4

怖さで固まったまま

その光景を見ていると、

 

次第にはっきりと、

何かが聞こえてくるようになりました。

 

不気味に響くその声に、

すぐにでも耳を塞いでしまいたかったですが、

 

叔母さんの言葉を信じ、

必死で耐えていました。

 

やがて、

それが何なのかがわかりました。

 

歌です。

 

叔母さんの言っていたとおり、

確かに歌を歌っているように聞こえました。

 

何人もの声が入り交じり、

気味の悪いメロディーで、

ノイズのように頭に響いてくるのです。

 

何と言っているのか、

聞こえたままの歌詞はこうでした。

 

かえれぬこはどこか

かえれぬこはいけのなか

かえれぬこはだれか

かえれぬこは○○○(誰かの名前?)

かえるのこはどこか

かえるのこはいけのそと

かえるのこはだれか

かえるのこは○○○(こっちは私の名前?)

かえれぬこはどうしてる

かえれぬこはないている

かえるのこはどうしてる

かえるのこはないている

 

この歌詞が二度繰り返されました。

 

全員がずぶ濡れで、

水溜まりを見つめたまま歌っていました。

 

誰も大きな声を出しているような

感じには見えず、

 

私のいる部屋からも

それなりに距離があるはずなのに、

その歌ははっきりと聞こえていました。

 

本当に例えようのない恐怖でした。

 

二度繰り返される間、

ただガタガタと震えながらその光景を見つめ、

その歌を聞き続けていました。

 

二度目の歌が終わった途端、

静寂に包まれると同時に一人が顔を上げ、

私の方を見ました。

 

それは、満面の笑みを浮かべた

先輩でした。

 

さっきまではあまりの恐怖で

気付きませんでしたが、

よく見ると先輩の父もそこにいました。

 

ただ一人、

私を見上げ微笑んでいる先輩に、

私は何の反応も示せませんでした。

 

しばらくそのままでいると

突然そっぽを向き、

どこかへ歩いていってしまいました。

 

すると、

周りの人達も一斉に動き出し、

ぞろぞろと先輩の後へ続いていきました。

 

終わったんだ・・・

 

私はガクンとその場に座り込み、

茫然としていました。

 

早く叔母さんのとこに戻りたい、

でも体が動かない。

 

頭がぼーっとなり、

意識を失いそうにフラフラとしていたところで、

叔母さんが2階に上がってきてくれたのです。

 

「終わったね。怖かったでしょう。

よく耐えたね。もう大丈夫よ。もう大丈夫」

 

そう言いながら叔母さんに抱き締められ、

私はせきをきったように

泣き出してしまいました。

 

何を思えばいいのか、

本当に分かりませんでした。

 

少しして落ち着いた私は、

叔母さんに抱えられながら

居間に戻りました。

 

時間はもう2時を過ぎていました。

 

時間を確認すると、

「○○ちゃん、

ホッとしている時間はないの。

あの子やあの子のお父さんは、

今日はもうここには戻ってこないけど、

さっきのはもう一度行われるわ」

 

「・・・えっ・・・?」

 

「今度は3時に。歌の内容も

さっきとは少し違うものになるの。

 

ここでぐずぐずしていると、

またあの子達が水溜まりに集まってくるわ。

そうしたらもう取り返しがつかなくなる」

 

「そんな、どうしたらいいんですか?

私はどうしたら」

 

「落ち着いて。今から私の家に行くわ。

この町を出て少し行ったとこにあるから。

 

でも、あなたが持ってきたものとかは

諦めてちょうだい。

持ち帰るとかえって危険だからね。

 

詳しい話はそれからにしましょう。

さぁ、すぐ行くわよ」

 

言われるままに

私と叔母さんは家を飛び出し、

 

そこから少し離れた空き地に

停められていた叔母さんの車に乗り込み、

その町を後にしました。

 

どこを走っても同じ景色に見え、

迷路から抜け出そうと

しているような気分でした。

 

1時間ぐらい走ると、

ようやく叔母さんの家に着きました。

 

中に入り、ある部屋に案内されたのですが、

その部屋の中を見て、

再び恐怖が全身に広がりました。

 

卓袱台しかないその部屋の壁一面、

天井にまでお札がびっしりと

貼られていたのです。

 

異常としか思えませんでした。

 

もしかして、

私は騙されているのでは?

 

叔母さんも、

何かとんでもない事に加担している一人?

 

そんな考えが頭をよぎりました。

 

次々と意味の分からない状況が続き、

自分以外の者に対して

不信感が募っていたのかも知れません。

 

そんな私の心を見透かすように、

叔母さんは言いました。

 

「いろいろと思うことはあるでしょうし、

恐怖もあるでしょうけど、

この部屋でなきゃ話は出来ないのよ。

ごめんね。我慢してね」

 

叔母さんは、

私をゆっくりと卓袱台の前に座らせ、

自分は真向いに座りました。

 

そして、話してくれました。

 

(続く)かえるのうた 4/4へ

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