連鎖する死の呪い 3/5

それから数日が経っても、

根が掘り返されることは無かった。

 

木を切り倒した人の一人は、

 

酒に酔い3メートル程の側溝に

頭から落ちてしまい、脳挫傷で死亡

 

もう一人は、

 

噂では農作業中にトラクターが横転し、

下敷きになり死亡したと聞いたそうだ。

 

Aが高校を卒業して町を離れる頃にも、

まだその根は残っていたそうだ。

 

俺とAが出会ったのは、

同じ専門学校でのことだった。

 

Aとは、それ以来の付き合いになる。

 

Aは俺とは違い、頭が良く

性格も良かった。

 

そんな奴だから、

就職にも困ることはなかった。

 

俺と違い、Aはすぐに就職した。

 

Aが就職してからも、

俺たちの付き合いは続いた。

 

会う度に、女のことで

説教をされていたのを、

今でも思い出す。

 

就職して3年ほど経過した頃だろうか。 

それは、あまりにも突然だった。

 

Aの父親が心臓発作で他界した。

 

Aが言うには、病気など

患ったこと無かったから、

 

もの凄くショックを受けたらしい。

 

Aが実家に大急ぎで帰った時、

すでに二人の兄が帰って来ており、

通夜の準備に追われていたそうだ。

 

それから数日が経ち、

葬儀も終え、

 

兄弟3人は久しぶりに実家で、

酒を飲んだそうだ。

 

その時、長男が二人の弟に

語りかけた。

 

「二人ともあの家の木を見たか?」

 

そう言われてAは、

次男と顔を見合わせて「何のこと?」と、

長男に聞き返した。

 

「根っこだけ残ってた木のことだよ」

 

そう言われて二人は、

あの木のことかと思い出したらしい。

 

長男は続けた。

 

「もう更地になってるんだよ。

そして、あの木の根を掘り出したのが

親父なんだ」

 

それを聞いて、Aの中で眠る

忌まわしい記憶が蘇ってきた。

 

次男はいきなり、怒気を強めて

長男に食ってかかった。

 

「ふざけるな。じゃあ親父は、

あの木に祟られて死んだっていうのかよ。

 

ただ掘り返しただけで祟られるのか。

馬鹿げてるぞ、そんなもん」

 

しばらくみんな黙っていたが、

Aは疑問に思ったことを口にした。

 

「何で親父は木の根を掘り返したんだろ。

兄貴は何か聞いてない?」

 

その問いに対して、二人の兄は

首を振るばかりだった。

 

長男は首を振りながら、

 

「掘り返した理由は俺にもわからん。

だけど掘り返した後、親父は突然死んだ。

どうしても俺には偶然に思えないんだ」

 

次男は、「兄貴やめてくれないか」

そう言って話を遮ろうとしたが、

 

それでも長男は話を続けた。

 

「昨日さ、夢に親父が出てきたんだ。

俺を見ながら、何度もすまないすまない

って言うんだよ」

 

それを聞いた次男は、

 

「何で兄貴のところだけに出て、

俺たちのところには出ないんだよ」

 

Aを見ながらそう語りかけた。

 

その問いに対して長男から出た言葉に、

二人とも驚いたらしい。

 

「次は俺なんじゃねーの。

だから親父は俺に謝りに来たんだろ」

 

二人はそれを聞いて、押し黙った。

 

その日はそれ以上そのことを、

3人とも語ろうとはしなかった。

 

その後、長男の言った

あの一言によって、

 

3人は今まで以上に

連絡を取り合うようになったそうだ。

 

父親の死後1年9ヶ月経った頃、

突然長男と連絡が取れなくなった。

 

次男からもその連絡がきた。

 

家に電話をしても、

嫁さんすら出ないとの事だった。

 

次男は不審に思い、

長男の勤める会社に電話したそうだ。

 

会社から返ってきた言葉は、

意外だった。

 

1ヶ月ほど前に突然退社した、

と聞かされた。

 

二人はすぐに

長男の自宅に向かった。

 

何度呼び鈴を鳴らしても、

誰も出て来ることはなかった。

 

不審に思ったのか、

 

隣の住人が出て来て、

話を聞いてくれた。

 

すると隣の人は笑いながら、

 

「3人で旅行に出掛けるって

言ってましたよ」

 

そう教えてくれた。

 

二人にはどうしても

納得がいかなかったらしい。

 

何で俺たちに何も告げずに

出かけるんだ?

 

あれだけ密に

連絡を取り合ってたのに。

 

それからすぐに二人は、

行きそうな場所として実家に向かった。

 

主の居なくなった家に辿り着いたが、

そこにも3人の姿は無かった。

 

それから2日後、

二人の元に警察から連絡がきた。

 

長男一家が事故死した、

という知らせだった。

 

事故の原因は、先に書いた通り

不可思議なものだった。

 

葬儀が終わっても、

二人は押し黙っていた。

 

しばらくして二人は、長男一家の

家の整理に追われた。

 

家の片付けをしている時に、

Aは長男が残したであろう

メモ帳を見つけた。

 

そこには、奇妙なことが

書いてあったらしい。

 

『俺が何をした』

 

その言葉が、何ページにも亘って

書き綴られていたそうだ。

 

最後のページには、

 

『俺と○○、そして○○、これで3人だ。

もう終わりにしてくれ』

 

次男とAの名前が書かれていた。

 

それが最後のメモだった。

 

次男にそれを渡し、

Aは押し黙った。

 

それを見た次男は、

「兄貴は神経質過ぎたのかもしれない」

 

そう言い終えて、

次男も黙りこくってしまった。

 

Aは心底怯えたそうだ。

 

馬鹿にする次男を無理に誘い、

祈祷師やらその手の除霊専門の所を

何カ所も回ったらしい。

 

長男が亡くなって2年経ち、

次男が事故死した。

 

そしてその話を俺は聞かされた。

 

呪いと言われても、

俺にはどうしてもピンとこなかった。

 

その話を聞いた後、

俺はAに話し出した。

 

(続く)連鎖する死の呪い 4/5へ

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