公衆電話の夜 2/3

Kは二十円くらいしか

入れてなかったのだろうか。

 

どうしよう。

Kの携帯に直接掛け直そうか。

 

そんなことを考えているうちに、

僕の手の中で携帯が振動する。

 

Kからに違いない。

 

僕はそのことに、

微塵も疑問を抱いていなかった。

 

けれども、ふと手が止まる。

 

携帯の画面。

 

表示されているのは『公衆電話』か、

Kの携帯番号だと思っていた。

 

読めなかった。

 

表示が文字化けしていたのだ。

こんなことは初めてだ。

 

ぶうーん、と

携帯は僕の手の中で振動している。

 

僕は僅かに揺れるカーテンの

向こうの窓を見た。

 

何もない。

見えない。

 

ヤモリも。

もちろん男など居ない。

 

そのまま窓を凝視しながら、

僕は通話ボタンを押した。

 

耳に当てる。

 

「もしもし?」

 

何か聞こえる。

小さいけれども誰かが話している。

 

「もしもし?K?」

 

『・・・遅く・・・ごめ・・・』

 

Kじゃない?

 

微かに聞きとれるその声は、

 

TVの砂嵐に似たノイズが混じり、

断片しか聞こえなかった。

 

何だ?

誰の声だ?

 

『・・・言うな・・・そ・・・』

 

男の声だというのは分かった。

 

しかし、一体だれなのか。

何を話しているのか。

 

僕に向けられた声では無い。

 

『・・・今から帰るよ・・・』

 

次の瞬間、

 

耳が壊れるかと思う程の何かが

ぶつかる様な音。

 

何かを引っ掻く様な音。

何かが壊れる様な音。

何かが割れる様な音。

 

そして何かが、

柔らかい何かが潰れる様な音。

 

思わず僕は携帯を耳から離した。

音が無くなる。

 

再び携帯を耳に当てる。

 

『・・・ツー、ツー、ツー・・・』

 

電話は、切れていた。

 

何だったのだろうか、今のは。

間違い電話だろうか。

 

・・・今から、帰るよ・・・。

 

最後の言葉だけは、

やけにはっきりと聞こえた。

 

家に帰るつもりだったのだろうか。

 

その男はいつも仕事帰りに

その公衆電話を使用し、

 

ある日、仕事が終わって

電話を掛ける前に・・・。

 

そこまで考えて僕は首を振る。 

妄想だ。そんなものは。

 

その瞬間、また携帯が震えて、

僕は身構える。

 

しかし、今度はちゃんと画面に

表示されている。

 

Kの携帯からだった。

 

「もしもし・・・?」

 

K『おっせーよ。

とっとと出やがれこの野郎が』

 

Kの声を聞いて僕はほっとする。

 

そうしてからすぐに、

 

何で僕が怒られなきゃいかんのか

という疑問点に気付き、

 

無性にKのすねを思いっきり

蹴ってやりたくなった。

 

K『男は出たか?』

 

「出てねー。・・・あ、でも、

変な電話が掛かってきた」

 

K『あ、ナニソレ?』

 

「今から帰るよ、って」

 

K『男から?』

 

「たぶん。それから、

すごい音がした」

 

K『ふーん。今、窓には?』

 

僕は窓を見る。

 

もちろん何も無い。

誰も居ない。

 

「異常なし」

 

K『・・・じゃ、間違い電話じゃね?

そんな噂聞いてねえし』

 

「うん・・・。何だか僕も

そんな気がしてきた・・・」

 

それからKは

『ああ、そうだそうだ』と、

 

何か面白いことを思いついた時の

声で言った。

 

K『俺、これから、

ある実験をしてみようと思ってんだけど。

お前、携帯耳から離すなよ』

 

「・・・何すんの?」

 

K『ま、それは聞いてからのお楽しみだ』

 

Kは何を企んでいるのだろうか。

気になった僕は、じっと耳を澄ます。

 

その時だった。

 

視界の隅で何かが動いた気がした。

 

顔を上げる。

 

窓。

カーテンが僅かに揺れている。

 

ヤモリだろうか。

 

いや、今のは

そんな小さな動きじゃなかった。

 

何だろう。

 

「・・・K?おーい、Kー?」

 

少し不安になった僕は

Kを呼んでみる。

 

でも返答は無い。

 

「おーいー。誰かいますかー・・・」

 

まただ。

窓の向こうで何かが動いた。

 

僕はベットから立ち上がり、

窓の方へと近づいた。

 

心臓の鼓動が段々と

早くなってくるのを感じた。

 

見間違いじゃない。 

僕の部屋の外に、何かがいる。

 

恐る恐る窓に近づく。

 

そして僕は携帯を耳に当てたまま、

カーテンを掴んで一気に開いた。

 

僕はその場に立ち尽くす。

 

携帯電話の向こうから

Kの声が洩れてきた。

 

けれどそれは僕の意識まで

上って来なかった。

 

外には何も無かった。

誰も居なかった。

 

窓の向こうには相変わらず

黒く塗り潰された街の景色が

広がっているだけ。

 

暗闇を背にしたガラスは、

鏡の様に僕の部屋の中を映していた。

 

外じゃない。 

そいつは部屋の中に居たのだ。

 

僕の背後。

 

窓とは反対側の玄関へと続く

ドアの傍に何かがいた。

 

振り向くことが出来なかった。

心臓の鼓動がより早くなる。

 

服装で男だと分かったが、

それ以上は無理だった。

 

そいつにはちゃんとした顔が

ついていなかった。

 

まるで、出来の悪いスプラッター映画を

観ている様な気分。

 

鼻から上が無い。

 

そいつは顔の半分が

欠如していた。

 

無いのだ。

文字通り無。

 

目も無い、

耳も無い。

 

おでこも無い。

ならば脳も無いのだろう。

 

(続く)公衆電話の夜 3/3へ

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One Response to “公衆電話の夜 2/3”

  1. 匿名 より:

    長ったらしくて面白くもない

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