見覚えの無いクラスメイトと一緒に

トンネル

 

中学2年生の時に体験した怖い話。

 

東京からほど近い千葉の国道にあるトンネルへ、クラスメイトと一緒に行ったことがある。

 

そこは、地元の暴走族も深夜には絶対に通らないというほど、幽霊が頻繁に目撃されている心霊スポットだった。

 

中学2年生の時、私は両親の離婚の為に千葉から東京の杉並区へ引っ越した。

 

私の転入した2年3組の教室では、怖い話をみんなで語り合うことが流行っていて、特に話している本人の体験談は大人気だった。

 

クラスに早く溶け込みたいと思っていた私は、千葉の国道にあるトンネルへ行って、そのことをみんなに話して聞かせようと考えた。

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幽霊が出ると言われるトンネルへ

日曜日の朝、最寄りの駅でトンネル近くの駅まで行く切符を買っていると、一人の男子に声をかけられた。

 

同じクラスの桑山という男子らしい。

 

正直、私はそのクラスメイトの顔も名前も覚えていなかった。

 

学校に通い出してからまだ2週間ほどしか経っていなかったからだ。

 

なんとなくクラスにいた様な気もするので、普通に話をした。

 

「どこに行くの?」

 

そう訊かれて私は、心霊スポットである千葉のトンネルに行くことを説明した。

 

「面白そうだなあ。オレも一緒に行かせてよ」と桑山は言った。

 

今回の千葉行きは自分だけの手柄話にしたかったのだが、話してしまった以上断りづらく、一緒に行くことにした。

 

電車に一時間ほど乗り、さらに40分ほど歩いて私たちが噂のトンネルに着いたのは正午を回った頃だった。

 

トンネルの中は薄暗くひんやりとしていた。

 

鍾乳洞みたいだと思った。

 

「何か感じるか?」

 

そう桑山が訊いてきた。

 

「分からないけど、薄気味悪いよね」

 

私たちは30分ほどトンネルの中をウロウロしたり写真を撮ったりしていたが、特に何も起きず飽きてきたので帰ることにした。

 

最後に、このトンネルに来た証拠として、お互いの写真を撮りその場を去った。

 

結局、幽霊を目撃することは出来なかったが、私にとってクラスメイトの桑山と親しくなれたことが大きな収穫だと感じていた。

 

次の日、学校に行って千葉のトンネルへ行って来たことをクラスのみんなに発表した。

 

桑山がまだ登校していなかったので、詳しくはあいつと一緒に昼休みにでも話すと言うと、話を聞いていたみんなの表情が一変した。

 

「○○、なんで桑山のこと知ってるんだ?」

 

そう訊かれたので、「いや、だってクラスメイトでしょ?昨日トンネルに行ったのは私一人じゃなくて桑山と一緒に行ったんだよ」と答えた。

 

すると、「そんなわけないだろ。だって、桑山は4月に交通事故で死んでるんだぞ?!」と、青ざめた顔で言った。

 

後日、現像から戻ってきた桑山が写っているはずの写真は、桑山の姿だけが丸々消え去り、単なる風景写真となっていた。

 

(終)

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