リゾートバイト(その後)1/6

あの後、俺達は死んだように眠り、

坊さんの声で目を覚ました。

 

「皆さん、起きれますか?」

 

特別寝起きが悪いAを、いつものように

叩き起こし、俺達は坊さんの前に3人正座した。

 

「皆さん、昨日は本当によく

頑張ってくれました。無事、憑き祓いを

終えることが出来ました」

 

そう言って、坊さんは優しく笑った。

 

俺達は、その言葉に何と言っていいか

わからず、曖昧な笑顔を坊さんに向けた。

 

聞きたいことは山ほどあったのに、

何も言い出せなかった。

 

すると、坊さんは俺達の心中を察したのか、

 

「あなたたちには、

全てお話しなくてはなりませんね。

お見せしたい物があります」

 

と言って立ち上がった。

 

坊さんは家を出ると、俺達を連れて、

寺の方に向かった。

 

石段を上る途中、Bはキョロキョロと

辺りを警戒する仕草を見せた。

 

それにつられて俺も、昨日見た

アイツの姿を思い出して、同じ行動を取った。

 

それに気づいた坊さんは、俺達に聞いた。

 

「もう大丈夫のはずです。どうですか?」

 

B「大丈夫・・何も見えません」

 

「俺も平気です」

 

その返事を聞くと、

坊さんはにっこりと笑った。

 

大きな寺に着くと、

ここが本堂だと言われた。

 

坊さんの後ろに続いて、

寺の横にある勝手口から中に入り、

さっきまでいた座敷と

さほど変わらない部屋に通された。

 

坊さんは、俺達にここで少し待つように言うと、

部屋を出て行った。

 

Bは落ち着かないのか、

貧乏揺すりを始めた。

 

暫くすると、坊さんは小さな木箱を手に、

戻って来た。

 

そして俺達の対面に腰を下ろすと、

「今回の事の発端をお見せしますね」

と言って箱を開けた。

 

3人で首を伸ばして、

箱の中を覗き込んだ。

 

そこには、キクラゲが

カサカサに乾燥したような黒く小さい物体が、

綿に包まれていた。

 

AB俺「何だこれ?」

 

よく見てみるが、わからない。

 

だがなんとなく、

どっかで見たことのある物だと思った。

 

俺は暫く考え、

とっさに思い出した。

 

昔、俺がまだ小さい頃、

母親がタンスの引き出しから、大事そうに

木の箱を持って来たことがあった。

 

そして箱の中身を俺に見せるんだ。

すげー嬉しそうに。

 

箱の中には、綿に包まれた

黒くて小さな物体があって、

俺はそれが何かわからないから

母親に尋ねたんだ。

 

そしたら、母親は言ったんだ。

 

「これはねぇ、臍(へそ)の緒って言うんだよ。

お母さんと、○○が繋がってた証」

 

俺は子供心に、

なんでこんなの大事そうにしてるんだろ?

って思った。

 

目の前にあるその物体は、あの時に見た

臍の緒に似ているんだと思った。

 

A「これ何ですか?」

 

「これは、臍の緒ですよ」

 

というか、似てるもなにも

臍の緒だった。

 

A「俺、初めて見たかも」

 

B「俺、見たことある」

 

「俺も」

 

「みなさん親御さんに

見せてもらったのでしょう。こういうものは、

大切に取っておく方が多いですから。

この臍の緒も、それはそれは

大切に保管されていたものなのです」

 

俺たちは、黙って坊さんの話を聞いていた。

 

「母親の胎内では、親と子は

臍の緒で繋がっております。

今ではその絆や出産の記念にと、

それを大切にする方が多いですが、

臍の緒には色々な言い伝えがあり、

昔はそれを信じる者も多かったのです」

 

B「言い伝え?」

 

「そうです。昔の人はそういう言い伝えを

非常に大切にしておりました。

今となっては迷信として語られるだけですが」

 

そう前置きをして、坊さんは臍の緒に関する

言い伝えを教えてくれた。

 

主に『子を守る』という意味を持っているが、

解釈は様々。

 

『子が九死に一生の大病を患った際に、

煎じて飲ませると命が助かる』とか、

 

『子に持たせると、その子を

命の危険から守る』というのがあって、

 

親が子供を想う気持ちが込められている

ところでは共通しているらしい。

 

俺たちは、その話を聞いて「へぇ~」

なんて間抜けな返事をしていた。

 

坊さんは一息入れると、

微かに口元を上げて言った。

 

「ひとつ、この土地の昔話を

してもよろしいですか?

今回の事に関わるお話として

聞いていただきたいのです」

 

俺達は、坊さんに頷いた。

 

(続く)リゾートバイト(その後)2/6へ

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