リゾートバイト(その後)6/6

そこからは、説明することが何も無いほど

普通だった。

 

家に行って暫くすると、

別の坊さんがやって来て、

「ここで一晩過ごすように」

と言われた。

 

そして、その坊さんは俺たちの部屋に残り、

微妙な雰囲気の中、

4人で朝を迎えたというわけだ。

 

次の朝、早めに目が覚めた俺達が、

のん気にめざにゅ~(TV)を見ていると、

坊さんがやって来た。

 

俺達は、坊さんの前に並んで話を聞いた。

 

坊さんは、俺達の憑き祓いは

完全に終わったと言った。

 

昨日言っていた通り、

俺達に憑いてきたモノは一匹で、

それは退化を遂げて

消滅したのを確認したんだと。

 

俺達は、それを聞いて安堵した。

しかし坊さんは、こう続けた。

 

女将さんを救うことが出来なかったと。

 

泣きそうなのか怒っているのか、

なんとも言えない表情を浮かべて、そう言った。

 

死んだのかと聞くと、

そうではないと言うんだ。

 

俺はその言葉から、女将さんが

跳ね回っている姿を思い出した。

 

ずっとあの状態なのか・・?

 

恐る恐るそれを聞くと、

坊さんは苦い顔をしただけで、

肯定も否定もしなかった。

 

女将さんの今の状態は、憑きものを

祓うとかそういう次元の話ではなく、

何かもっと別のものに起因してるんだって。

 

詳しくは話してくれなかったんだが、

女将さんが行った儀式は、

この地に伝わる『子を呼び戻す儀』

似て非なるものらしい。

 

どこかでこの儀の

存在と方法を知った女将さんは、

息子を失った悲しみから

これを実行しようと試みる。

 

だが、肝心の臍の緒は

自分の手元にあったわけだ。

 

こっからは坊さんの憶測なんだが、

女将さんはこれを試行錯誤しながら、

完成系に繋げたんじゃないか、

ということだった。自分の信念の元に。

 

そしてそこから得た結果は、

本来のものとは別のものだった。

 

堂には複数のモノがおり、

そこに息子さんがいたかはわからないと、

坊さんが言ってた。

 

この儀の結末は、

非常に残酷なものでしかないんだと。

 

それを重々承知の上で、

母親達は時にその禁断の領域に

足を踏み入れてしまう。

 

子を失う悲しみがどれ程のものなのか、

我々には推し量ることしか出来ないが、

心に穴の開いた母親が

そこを拠り所としてしまうのは、

いつの時代にもあり得ることなのではないかと。

 

Bは、女将さんのこれからを

執拗に聞いていたが、

坊さんは何もわからないの一点張りで、

俺たちは完全に

煙に巻かれた状態だった。

 

俺達が坊さんと話終えると、

部屋に旦那さんが入って来た。

 

俺は、正直ぎょっとした。

 

顔が土色になって、明らかに

やつれ切った顔をしてたんだ。

 

そして、俺達の前に来ると、

泣きながら謝ってきた。

 

泣きすぎて何を言ってるのかは

全部聞き取れなかったんだけど、

俺達は旦那さんのその姿を見て、

誰も何も言えなかった。

 

俺達に申し訳ないことをしたと

泣いているのか、

それとも女将さんの招いた結果を思って

泣いているのか、

どっちだったんだろうな。

今となってはわかんねーな。

 

その後、俺達は何度も坊さんに確認した。

これ以降、俺達の身には何も起きないのか?と。

 

すると坊さんは、困ったような顔をしながら、

「大丈夫」だと言った。

 

その後、坊さんの所にタクシーを

呼んでもらって、俺達は帰ることになった。

 

一応、昨日の朝、俺を家まで運んでくれた

おっさんが、駅まで同乗してくれることに

なったんだが。

 

このおっさんがやたら喋る人で、

それまでの出来事で気が沈んでる

俺達の空気を一切読まずに、

一人で喋くりまくるんだ。

 

そんでこのおっさんは、

「それにしても、子が親を食うなんて、

蜘蛛みたいな話だよなぁ」

と言ったんだ。

 

俺達は胸糞悪くなって黙ってたんだけど、

おっさんは一人で続けた。

 

「お前達、ここで聞いた儀法は

試すんじゃねーぞ。自己責任だぞ」

 

そう言って笑うんだ。

 

俺達の気持ちを和らげようとして言ってるのか、

本気でアホなのかわかんなかったけど、

一つ確かなことがあった。

 

俺達は、坊さんに真実を隠されて

教えられたんだ。

 

儀の方法は、その結果と一緒に

この地に伝わってるんだ。

 

このおっさんが知ってて、

坊さんが知らないはずないだろ?

 

そう思うと、これだけの体験をさせといて、

結局は大事なところを隠して話されたことに、

すげーショックを受けた。

 

坊さんを信用していた分、なんか

怒りにも似たものが湧き上がってきたんだ。

 

タクシーが駅に着くと、おっさんが

金を払うと言ったが、俺達は断った。

 

早くこの場所から逃げ出したい、

その一心だった。

 

坊さんが「大丈夫」と言った一言も、

全部嘘に思えてきた。

 

それでも俺達には、

あの寺に戻る勇気はなくて、

帰りの電車をただただ

無言で待つことしか出来なかったんだ。

 

その後、帰って来てからは何ともない。

 

「もう2度と、あの場所へは行かない」

 

3人で話してると、必ず1回は

その言葉が出てくるくらい、俺達にとって

トラウマになった出来事だったんだ。

 

後、Bはあれから蜘蛛を見るのが

どうもダメらしい。

 

成長過程のアイツの姿を

見てるからね。

 

俺はというと、今は普通に社会人やってます。

若干暗闇が苦手になったくらい。

 

人間、のど元過ぎれば熱さ忘れるって、

あながち間違いじゃないかもしれないな。

 

本当の本当に後日談なんだが、

その話を残りの友達2人に話したんだ。

 

2人とも俺達3人の様子を見て、

一応は信じてくれたんだけど。

 

でもそいつら、その後に興味半分で

旅館に電話を掛けてみたんだって。

(最低だろ・・・)

 

そしたら、電話に出たのは

普通のおばさんだったらしい。

 

そいつら、俺達に言うんだよ。

女将さんか確認しろって。

 

そんで、後ろでカラスが

異様に鳴いてるって言うんだ。

 

絶対無理だと思った。

 

女将さんが無事でも無事じゃなくても、

俺にはその後を知る勇気なんか出なかった。

 

(終)

 

本作品を某ネット掲示板に投稿した作者の表現を大切にするため、
誤字脱字や改行等の修正以外はそのままにさせていただきました。
私ながらに調べてみたことですが、この話の舞台は
愛媛県にある奥土居神社だとというのが有力な情報です。
(怖話ノ館管理人)

 

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One Response to “リゾートバイト(その後)6/6”

  1. あおば より:

    「死んだ人間を生き返らせることは出来ない。それがこの世界の真理だ。」

    管理人よく調べられたね。スゴイ。

    てか、昔2chで読んだ時に後日談なんか無かったぞ。

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