指輪 2/2

エンドレスに足元から聞こえる

猫の鳴き声に混ざって、

 

ぽそ、ぽそ、と『死んじゃえ』とか

『死ねばいい』とか呟く女の声がし続けた。

 

建物を出た辺りで、しゅっ、と

足の間を通り抜けるような感触がして、

 

足がもつれて思いっきりこけて、

止めてあった自転車に突っ込んだ。

 

B「うわー俺君!?大丈夫?」

 

待ち合わせしてた自販機の所から、

大声で言いながらBが駆け寄って来た。

 

B「俺君、手!それに

足も血が出てんじゃん!」

 

Bが騒ぎながら俺に手を貸してくれ、

荷物を持ってくれて、気がついたら 

猫の声も変な女の声もしなくなってた。

 

ただ、後で確認したら、

やっぱり足の傷は自転車の金具で

切ったんじゃなく 、

爪で引っかかれた傷でした。

 

Aの怪我もそれほど酷くはなく、

Aの鞄の中にあった指輪は、

AがBから借りたものでした。

 

同じようなのがどうしても欲しいから、

お店で見せて「こう言うのが欲しい」と

言うのに見本にしたいと言って借りたそうで。

 

ただ、俺が鞄をBに預けた話をすると、

Aは「・・・あ、そう」と言ったきりで、

 

猫と女の声についても、

何も説明してくれなかった。

 

今になって俺がこの話を思い出したのは、

最近AがB宅を訪問した時の件があったから

でした。

 

Bの部屋の話、

白い衣装と神社の一件の話を聞き、

 

Bの中にいるものはBを守るだけで、

悪霊退治をするわけではない。

 

周囲の人がとばっちりを受けても祟られても、

Bが無事なら何もしてくれない。

 

と言うことを知って急に気になったのが、

この一件だった。

 

俺はこの後、

Bと指輪の話をしたことがある。

 

Bはその時、Aから返却された、

その指輪をはめてた。

 

B「Aが同じようなの欲しがってたけど、

見つからなかったんだよね。

 

あれ、Eが親戚の子に

選んで買ってきて貰ったんだって」

 

Eに指輪を選んでくれたその女の子が、

Eの在学中に亡くなってるんだ。

 

Eが葬儀に出たと言っていたのは、

確か、この一件の少し後だった。

 

当時は、俺が女の声を聞いた時には

生きてたわけだから無関係だと思ってた。

 

あの一件は、Bの手元に指輪が戻って、

Bには何も起こらなかった事で、

片付いたつもりでいた。

 

でも、今考えてみるとどうしても気になって、

先日、改めてAに聞いてみた。

 

Aは物凄く迷ってたが、

やっぱり黙ってるのがしんどかったようで、

しつこく聞いたら最後には話してくれた。

 

黒だった。

 

A「・・・その親戚の子、

Eが好きだったんだと思うよ。

 

どこで呪いの方法を見つけたのか

知らないけど、実際に猫を殺して

本格的に呪いかけるくらい、

Bが憎かったんじゃないかな・・・」

 

俺が聞いたのは、やっぱり

その子の声らしかった。

 

Eから指輪を貰う女に対して、

死んじゃえ、と呟いて、

あれって猫を殺した時の声なんだろう

と俺は思った。

 

そしてAが心配してたのは、

Bが呪われることじゃなかった。

 

Bの中にいるものの性質を

かなり正確に把握してたAは、

 

動物を殺して形を整えて行われた、

呪いの「返り」を気にしてたんだった。

 

A「私も俺君も大怪我じゃなかったでしょ?

呪い自体には、人を殺すような

力は無かったんだと思う。だけど・・・

 

Bにはアレが居たから。

 

Bをターゲットに真っ直ぐ飛ばされたものを、

アレが真っ直ぐ打ち返した時に、

「加速が付いちゃった」んだと思う。

 

Aは、それ以外は何も言わなかった。

 

多分、当時のAは、指輪を

どこか霊能者のところへ持ち込んで、

呪いを外してもらおうと考えてたんだと思う。

 

正直、Aと話してから、

少し気持ちの整理がつかなくて、

混乱してる。

 

俺がBを呼んでAの鞄を渡さなかったら、

Eの親戚の子は死ななかったんだろうか。

 

BにAの鞄を預けたと言った時、

Aが取り戻そうとしなかったのは、

 

もう間に合わないと思ったのか、

怪我して怖くなったのか、

 

俺は解らない。

 

いずれにせよ、

もう何年も前の話だ。

 

Bは何も悪くないんだろう。

 

普通に彼氏から貰った指輪を、

喜んでただけで。

 

少し大雑把だけどいい子で、

同じものを探すのに貸してと言ったAに、

快く指輪を貸し出してくれるような

奴だったわけで。

 

でも、俺が悪いんだとも思いたくない。

 

Aも俺も巻き込まれただけじゃないか、

って気持ちが消えない。

 

同時に、猫を殺して呪いをかけた

女の子は確かにゾッとするけど、

 

相手がBでなかったら、

死人は出なかった話だったんだと

思わずにいられない。

 

Aが複雑な顔で、

「何も出来ないんだよね」

って繰り返す気持ちが、

 

初めてちゃんと解った気がした。

 

(終)

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