ピアスの穴から
ある女の子が、
ピアスの穴を開けることにした。
お金がもったいないと思い、
病院ではなく、
自宅で開けてみた。
きちんと穴が開いて、
さっそくピアスをした。
それから数日後、
彼女は耳に違和感を感じた。
なんだかムズかゆい気がする。
鏡を見ると、
ピアスの穴から白い糸のようなものが
出ているではないか。
この糸がかゆみの原因だと
思った彼女は、
エイッ!と力を込めて
糸を引きちぎった。
いきなり彼女の目の前が
真っ暗になってしまった。
実は、この白い糸は視神経で、
それを切ってしまった彼女は
失明してしまったのだ。
この話の派生として、
「体内の神経が全て引っ張り
出されてしまった」
「眼球が眼窩(がんか)で
反転してしまった」
または、1993年頃に渋谷で
局地的に広まった、
「失明したことを怨み、
ピアスをしている人の
耳をかじる、
『かじり女』になった」
というものも存在する。
検証
ピアスの穴開けは、
専門の清潔な器具を用いて
行えば安全であり、
当然ながら失明はもとより、
障害が残ることなどありえない。
画家のゴッホは耳たぶを失ったが、
失明をしたなどという事実はない。
そもそも、
視神経は脳神経の一つのため
脳と直接繋がっており、
耳たぶには通っていない。
また視神経はタコ糸程度の
太さがあるため、
それよりも小さなピアス穴から
露出するという点も不自然。
「東洋医学の目に関係するツボが
耳に存在するため」
と説明を試みる例もあるが、
ツボは流派によって
異なることが多く、
科学的に立証することは難しい。
また、
ツボに刺激を加えることで
失明に至ったという事例は、
今まで確認されていない。
人によっては、
ピアスの穴から白い物体が
出ることがある。
これは、ニキビなどと同様の、
余分な脂分の集合体である、
角栓や粉瘤腫の中身であると
考えられる。
ピアスの危険性を誇張する目的で、
この噂が用いられる例がある。
これは、「ピアス=不良」
という偏見が根底にある、
一部の親や教師が、
子供たちに対しての方便として
用いたものが広く流布したためで、
これこそが、
この噂が都市伝説化した原因である、
という指摘もある。
(終)