他界した親父がお盆になると帰って来る
まぁちょっと聞いておくれ。
ほとんど誰にも話したことはないのだが、これは俺が小学4年から中学に上がった頃までにあったことで、今もしっかりと記憶の中に焼きついている。
俺が小学3年の秋、親父が病気で他界した。
もともと病弱でもなかったのに、それが突然に。
そして次の年の8月、親父が他界してからの初盆のこと。
夢だか現実だかよく分からなかったが、親父が「ただいまー」と言って玄関から帰って来た。
その時の親父は「お盆だから帰って来た」とか話していたかな。
親父と会うのは必ず夢の中だったが、夢にしては妙に現実っぽさがある夢だったと記憶している。
そんなことが小学校を卒業するまで続いた。
俺は子供心に、お盆前になるとまた親父が帰って来る、と確信していた。
実際お盆になると、親父が「今年もお盆になったから帰って来たよ」と言いながら、夢の中で俺と喋ったりしていた。
そして中学1年の8月。
その時のお盆にも親父は帰って来たのだが、別れ際に「もう、お父さんが居なくても平気だな」と言って消えていった。
それきり、親父は俺の前に姿を見せなくなった。
霊感なんてものはない俺が唯一体験し、27歳になった今でも鮮明に思い出せる子供の頃の不思議な夢だった。
(終)