我が家の風呂場にいた幽霊の女の子
これは、少し前の話になる。
古い賃貸マンションの我が家の風呂場に、白いワンピースを着た、やたら髪の長い女の子が頻繁に出ていた。
私は色や輪郭が何となく・・・という、ぼやけた見え方しかしなかったのだが、はっきり見える息子曰く、「いつも顔を伏せて体育座りしてるから顔はわからない。それに服も半袖で寒そう」と。
いくら幽霊でも寒い季節はさすがに気の毒かなと思い、試しに風呂場の脇にある棚に、買ってはみたけどやっぱり自分には似合わなかったカーディガンを小さなチョコやお茶と一緒にお供え的に乗せて置き、風呂場に向かって「良かったら着てみてね~」と一声かけてみた。
そして、数日後の夜半過ぎのこと。
寝室の暗がりに何かいる気配で目が覚めた。
寝惚け眼で気配のする方向に目を凝らすと、その時は何故か風呂場の女の子が正座しているのがはっきりと見えた。
しかも、あのカーディガンを着て嬉しそうな表情をしている。
バサバサの髪だが、目は大きく、とても可愛い子だった。
私は、「あ~やっぱり似合う。風邪ひかなくて良かったね~。次は髪の毛を何とかしようね~。可愛いんだからね~」と、かなり寝惚けながら言葉をかけて再び夢の中へ。
後日、クシと飾り付きのヘアゴムと、ついでにモコモコの靴下を置いておいた。
すると、髪を編み込みしていて、靴下を履いて家の中をウロウロするようになった。
それからしばらくしてから彼女は旅立ってしまい我が家に出なくなったが、今は暖かい服装なので大丈夫かなとも思っている。
(終)