「今、風が吹けばなあ・・・」
これは、知人が体験した話。
それは願掛けをして、山の上のお社で百度祓えをした帰りのこと。
緊張感を持続させるべく、大振りのナイフを刃剥き出しに手に持ち、夜中の山道を駆け下りていた。
すると、行く先に人影が見えた。
老人と、女の子が二人。
聞けば、お社にお参りへ行こうとしたが、老人が足を痛めてしまったらしい。
彼はナイフを腰にしまい、老人をおぶった。
真っ暗な夜の山道、木の根やら何やらに足を取られそうになりながら下山したところ、麓の辺りでふっと背中が軽くなったらしい。
見渡せば、それまで付いて来ていた女の子たちもいない。
不思議なこともあるものだ、と首を傾げながら彼は家に帰った。
そして後日、街中で車に乗っていた時のことだった。
信号待ちをしている女子高生たちが見えた。
「今、風が吹けばなあ・・・」と彼が思ったその瞬間、突風が吹き、彼女らのスカートが一斉に捲れ上がった。
「もしかしたら、あの老人と女の子たちのお礼かもしれない」
彼は真面目な顔でそう語っていた。
とっぴんぱらりのぷう。
※とっぴんぱらりのぷう|参考
物語の締めの言葉として使われる。 意味は「めでたし、めでたし」。
(終)