姑の幽霊に怒りをぶつけた夜
昨日の夜、幽霊が出た。
初めて幽霊を見た。
だいぶ前に死んだ姑が枕元に立っていた。
納棺の時には白装束の上にお気に入りの着物を掛けたのに、黒く腐ったような服を着て、恨めしげな顔をして立っていた。
ああ、そういえばこの人、「死んだらきちんと供養してもらわないと成仏できない」と思っている人だった。
けれど、かろうじて四十九日をしただけで、あとの法事は全然していないし、そもそも納骨もちゃんとしたのかな?
墓も仏壇も放置しているけど、どうなっているんだろう?
そう考えながら布団を被って寝ようとしたけれど、やっぱり寝れなくて、枕元を見てみるとまだ居た。
なんだか無性に腹が立ってきた。
そして…
「私に言いたいことでもあるんですか?
私もヨシキさん(夫・仮名)も、あなたのお世話をきちんとやりましたよね?
私は生き甲斐だった仕事を休職して介護したし、ヨシキさんも出世を諦めて介護した。
娘は受験の大変な時期に手伝ってくれた。
お天道様に顔向けできないことはしていませんよ!
金は出さず手伝いもせず、文句ばっかり言っていた義弟君と義妹さんは、あなたが死んだ後、私たちに『母さんをきちんと世話せず、虐待した。訴えてやる!お前たちのようなクズに、墓や仏壇を任せることはできない。家ごとよこせ!』と言ってきたんですよ?
私たちはもう疲れ果てていたから、今後は墓や仏壇の世話や法要を全部、義弟妹さんたちがやることを条件に、遺産は全部放棄したんですよ?
供養してほしけりゃ、あなた自慢の立派な次男ちゃんか、嫁と違って賢い娘ちゃんに言いなさいな。
うちに言ってきても無駄だよ!」
…と、幽霊の姑に向かって怒鳴ってやった。
私は吃音があって喋るのが苦手で、生前は姑に言いたいことが言えなかったのでスッキリした。
幽霊相手だとスラスラ言えた。
直後に姑はスーッと消えていった。
義弟妹たちの所にでも行ったのかな?
ただ、あの二人はずっと遺産を巡って争っているので、法事をしてくれるかどうかはわからないけどね。
今日、夫が出張から帰ってくるけれど、幽霊のことは言わないでおくつもり。
(終)