女性が生き続けられない家

私の家の近所で、数軒先に

先日まで空き家だった家があります。

 

もう築30年程経つ、古い家です。

 

昨年、前の持ち主が他界されたので、

売りに出されておりました。

 

その家にまつわる話です。

 

前の前の持ち主だったKさんは、

ごくごく一般的な家庭。

 

両親と中学生の娘の

3人暮らしでした。

 

娘さんは少々神経過敏なところがあり、

中学に上がってからは、

親と衝突が絶えなかったようです。

 

そして15歳になった夏、

いつものように親子喧嘩した娘は

風呂に入り手首を切り、

貧血で意識を失ったようです。

 

30年前ですから、

今のようなお湯を入れて終わり、

という風呂ではありません。

 

水から焚く、ガス風呂です。

 

娘は真っ赤に染まった風呂の中で、

湯だった状態で発見され、

全身ふやけていたそうです。

 

Kさんはその事件の後、

すぐに引っ越されました。

 

Kさんが引越した後、

今度はIさん一家が引越ししてきました。

 

Iさん一家は、

両親と大学在学中の兄、

中学生の娘の4人家族。

 

兄は市外の大学だったため、

夏休み以外ほとんど家に帰ることは

なかったようです。

 

中学生の娘は大人しく、

親に従順な子だったそうです。

 

その娘が15歳の夏、

体育の授業で跳び箱に失敗し

頭から落ち、

脳内出血で亡くなりました。

 

原因は友人が壊れていた跳び箱を、

ちゃんと押さえていなかったからだと、

母親は娘の友人を恨んでいたようです。

 

この頃、私の母親も、

I家を訪れる娘の友人の姿を

よく見たそうです。

 

そして半年後、

今度は母親が骨肉種を患い、

最後は眼球や鼻や唇など、

全て侵されました。

 

手術で切り取り、

まるで、のっぺらぼうのようになって

亡くなったそうです。

 

そして、その母親の死後から

一年も経たないうちに、

I家のご主人は友人の紹介で、

後家さんをもらうことになりました。

 

後家さんをもらったI家ですが、

後家さんは中々明るい方で

近所付き合いも上手でした。

 

息子とも上手くやっているようで、

この家の住人も今度こそ落ち着くだろう、

と近所の人々は安心しておりました。

 

しかし、再婚して一年後。

 

後家さんは風呂場でガス中毒で倒れ、

K家の娘のように、湯船の中で

湯だった状態で発見されたのです。

 

当時、私は幼かったのですが、

救急車とその家との雰囲気を

はっきりと覚えています。

 

禍々しく異様な・・・。

 

近所では噂が立ちました。

 

「あの家に住む女性は、

みんな亡くなる」

 

亡くなった後家さんに至っては、

K家の娘と同じ状態で発見されたため、

娘の呪いかもしれないと囁かれました。

 

いつしか噂は町内の外にも漏れ、

近隣住民では

誰も知らぬ者は無いほどの、

有名な家となりました。

 

I家のご主人は、それからも、

この不名誉な噂が立った家に、

ずっと住み続けました。

 

20年余の歳月が流れ、

住民の様子も変わり、

古くから住んでいるものも、

噂を口にすることがなくなっていました。

 

そして昨年、I氏は亡くなりました。

 

息子さんが家を売りに出したのは、

今年になってからでした。

 

古いということと、

家の雰囲気がどことなく暗いことから、

買い手が中々つかない様子でした。

 

が、今年の夏、

町内の貸家に入っていた一家の

引越しが決まりました。

 

一家は4人。

 

家中の明かりを点して、

今まで暗かった空き家に、

すっかり活気が戻ったように見えます。

 

しかし・・・。

 

古くから住んでいる町内の者は、

皆息を潜めながら、

事の成り行きを見守っているのです。

 

なぜなら、一家の娘は現在14歳。

そして来年は15歳。

 

あの家に住んだ娘は、

16歳になれないからです。

 

(終)

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