七代に渡ってかけられた盲の呪い

白目

 

宮沢というところは昔、

 

丈の低い柳が一面に生い茂る

潅木(かんぼく)地帯であったという。

 

その昔、俺の村では、

 

春に農作業をする前に”野火入れ”といって

下草を焼くことが慣例となっていた。

 

その日も村の若い者が宮沢に出て、

盛んに野火入れを行っていた。

 

が、夕日も沈みかけた時、

 

薄明かりの中に突然として

白い人影が踊った。

 

若者はビックリして、

「人がいるぞー!」と叫んだ。

 

・・・見ると、

 

六部(お遍路)の格好をした一人の男が、

四方から押し寄せる火に狼狽していた。

 

※狼狽(ろうばい)

うろたえ騒ぐこと。慌てふためくこと。

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お前たちの一族に盲を絶やさぬ・・・

この街道沿いの野原で、

 

六部は野宿をしようかと

野原に寝転んでいたのである。

 

六部は『盲目』であった。

 

若者たちが騒ぎ立てる間にも、

火は野原にどんどん広がってゆく。

 

六部は、

 

「この野郎共、俺が居ることを知ってて

わざと火をつけやがったな!」

 

と大声で喚き散らした。

 

「何だと!

人聞きの悪いことを言いやがって!

 

そんなに死にたいなら、

お望み通り殺してやる!

 

六部の言葉に若者の一人が激怒し、

 

あろうことか持っていた火を

六部の四方から放ってしまった。

 

見る見るうちに辺りは炎に包まれた。

 

六部は火に抗(あらが)おうにも、

盲目なのでどうすることも出来ない。

 

そのうち方向も分からなくなり、

 

ついには白装束にも飛び火し、

六部は火だるまになった。

 

「熱い熱い!焼き殺される!」

 

と、七転八倒する六部を見て、

若者共はイイ気味だと大笑いした。

 

思えばちょっとした感情の行き違いが、

若者たちを“人殺し”にしてしまったのである。

 

六部は見る間に焼け爛(ただ)れ、

(もだ)え苦しみ、

 

ついに地べたに倒れ伏した。

 

六部の顔は真っ黒に炭化していたが、

 

突然六部は“カッ”と目を見開き、

若者たちを睨みつけた。

 

六部は盲(めくら)だったので、

その目は白く濁っていた。

 

炭のようになった顔に、

白い目がギョロリと光っていた。

 

「俺はここで殺される。

何の咎もないのに殺される。

 

努々忘れるな。

 

これから七代に渡って、

お前たちの一族に盲を絶やさぬ。

 

七代祟ってやるぞ!

 

※咎(とが)

人から責められたり非難されたりするような行為。過ち。

 

※努々(ゆめゆめ)

決して。きっと。

 

その怒号を最期に、

六部は力尽きた。

 

身に纏っていた白装束は完全に焼け爛れ、

全身の脂が焼けてブスブスと沸騰していたという。

 

その鬼気迫る死に顔を見て

若者たちは今更のように怖くなり、

 

一目散に家へと逃げ帰った。

 

その後、六部の宣言通り、

若者たちの子孫に目の悪い者が続出した。

 

ついには里が盲だらけになってしまい、

里全体が随分と衰退してしまったという。

 

今ではそれも無くなったので、

きっとこの話は七代は昔の話なのだろう。

 

(終)

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