見下ろしながら睨む女を見た日から

マンション

 

前に住んでいたマンションでの出来事。

 

当時、私と姉は小学生で、

なんだかんだ仲が良かったんだけれど、

 

ある日、姉がマンションの下の

駐車場で遊んでいたら、

 

ふと上から視線を感じたらしい。

 

上を見てみると6階くらいの廊下から、

 

長い黒髪に白いワンピースを着た

顔面蒼白の女の人が、

 

姉を見下ろして睨んでいたらしい。

 

帰宅後に話を聞いたんだけれど、

 

林間学校での発禁になった心霊写真の話さえ

あっけらかんと話していた姉が、

 

ガチでビビってた。

 

※発禁(発売禁止)

 

(林間学校の夜に部屋で撮った

写真の背景の窓に、

 

緑色の人が写っていたらしい。

 

あまりにも怖すぎるから担任がその写真だけ

売らなかったってお話)

 

その日を境に姉は真夜中になると、

いきなり夜泣きをするようになった。

 

いきなり泣き喚き出すんだけれど、

 

親が起こすまでずっと寝たまま

泣き叫んでいるの。

 

でも、起きた姉は夢の内容を

全く覚えていなかった。

 

そんな日が数日続いて、

 

それと同時に優しかった姉の性格は、

徐々に豹変していった。

 

事あるごとに殴る蹴るの暴力で、

私は涙目・・・

 

子供ながら毎日毎日、

姉に殺されるんじゃないかと思っていた。

 

顔つきも性格も、

今までの姉とは別人のようだった。

 

それでもシスコンの私は、

 

※シスコン

シスターコンプレックス。女姉妹に、強い愛着や執着を抱くことをいう。

 

殴られようが蹴られようが

姉にくっ付いていた。

 

姉が親と壮絶な喧嘩をした日があって、

 

映画とかで精神病の患者が

暴れたりするシーンがあるけれど、

 

姉はあれくらい暴れていた。

 

お母さんも困ってお手上げ状態。

 

結局、姉は暴れるだけ暴れて

部屋に閉じこもった。

 

私は姉が心配で姉の部屋に

行こうとしたんだけれど、

 

なんだか自分の家なのに、

 

嫌な雰囲気が漂っていて

廊下がすっごく怖い・・・

 

でもやっぱり心配だから部屋に行ったら、

 

姉は真っ暗な部屋で窓の方を向いて

ポツンと座っていた。

 

違和感というか明らかに様子がおかしくて、

壁に穴が開いていた。

 

「大丈夫?」

 

「うるせええええええええ!!」

 

いきなり怒鳴られてビビるも、

再度話しかける。

 

「壁に穴が開いてるけど・・・?」

 

「殴ったらね、

穴開いちゃったの(笑)

 

話をしているのは姉なのに、

もう姉じゃなくて別人と話している感覚。

 

なんて声を掛けていいか戸惑いつつ、

再度話しかけた。

 

「夕飯、食べよ?」

 

すると、

ずっとそっぽ向いていた姉が振り向いて、

 

「うん!」

 

って。

 

さっきまで般若みたいな怖い顔だったのに、

いつもの優しい顔の姉に戻っていた。

 

お母さんにもすぐに謝っていたし、

夜泣きも無くなって、めでたしめでたし。

 

・・・ではなかった。

 

気がつくと、

昔に通っていた幼稚園にいた。

 

うん。まさに夢。

 

すぐにこれは夢って気づいた。

 

どうせなら良い夢を見たいし、

目を覚まそうとしたけれど、

 

目覚められない。

 

夢なら好き勝手やってやろうとか

思う雰囲気じゃなくて、

 

嫌な感じがして、

一刻も早く夢から覚めたかった。

 

とりあえず幼稚園から出ようって

思ったんだけれど、

 

門を出ると、また幼稚園にいる。

 

どこから出ても、

幼稚園から出れない。

 

ほっぺをつねってみるけれど、

やっぱり感覚が無くて、

 

強く目を瞑っても覚められない。

 

ふっと後ろを向くと、

見知らぬ髪の長い女の子がいた。

 

「ふふふ(笑)

飛び降りたら夢から覚められるよ」

 

とか言ってくる。

 

夢だと分かっているけれど、

飛び降りたらいけない気がした。

 

でも女の子は、

 

「飛び降りないと一生、

夢から覚められないんだよ(笑)

 

って言ってくる。

 

夢だと気づいてからずいぶん経つのに、

一向に目覚められないし、

 

お母さんに起こしてって念じても、

起こしてくれるわけもなく。

 

なすすべがなかった。

 

朝になれば起こしてくれるけれど、

夢の世界はどんよりと紫色の空で、

 

時間の経過が全く分からないから

すっごく長く感じた。

 

怖いし、女の笑い声がずっと聞こえていて、

もう飛び降りちゃおうかなって思った時、

 

クラスメートの霊感強いとか言われていた

男子のAくんが出てきて、

 

「ダメだよ」

 

って。

 

さらに、そのAくんが何か呟いた瞬間、

目が覚めた。

 

すぐさま朝食の用意をしていた母に、

夢から覚めれなくて大変だったことを話した。

 

「でも良かった!

夢から覚められて!」

 

夢から覚めれたことが、

もう嬉しくて仕方なかった。

 

でも母は、

 

「・・・覚めてないよ」

 

と、やけに低い声で呟いた。

 

その一言で母の動きが止まって

くるっと私の方へ振り向き、

 

「逃がすわけないじゃん!

あははははははは(笑)

 

って大笑いしだした。

 

その笑い声は紛れも無く、

さっきのあの女の声だった。

 

次の瞬間、

 

「いつまで寝てんの!

ママレードボーイ始まるよ!」

 

と母が起こしてくれた。

 

今度は本当に夢から覚められた。

 

幸い、

それ以降は変な現象は無かった。

 

それから少しして引っ越した。

 

近所だけど。

 

姉と母と私で当時の話をしてみたら、

 

あのマンション・・・

なんか不気味だったよね、と。

 

当時は口にはしなかったけれど、

みんな思っていたことは同じだったみたい。

 

今は改装されて綺麗になったらしいけど。

 

<以下蛇足>

 

当時は子供だったし思いもしなかったけれど、

 

今考えるとあの女を見てからの数日は、

姉にあの女が取り憑いていたんじゃないかと思う。

 

壁に開いた穴の件は、

 

小6の女の子が殴ったくらいで

穴が開くような壁じゃなかった・・・

 

たぶん、夢の中の女と姉が見た女は、

同一人物のような気がする。

 

夢に出てきたクラスメートのAくんは、

よく分からない。

 

ただ後にも先にも、

 

あそこまで鮮明に覚えていて忘れられない

夢を見たのは初めて。

 

ただの夢かも知れないけれど、

今だにトラウマ。

 

もしあの時に母が起こしてくれなかったら

どうなっていたのか。

 

考えただけでも怖すぎる・・・

 

ちなみにその夢を見てから、

しばらくは寝るのが怖くなってしまい、

 

寝る前に母には・・・

 

・休みの日でも絶対7時には起こしてほしい

・なかなか起きなくても絶対起こしてほしい

・うなされていたらすぐ起こしてほしい

 

ってことを言ってから寝ていた。

 

今、突然に上からダンダンダン!と

叩く音がしてビビった・・・

 

あの女も一緒に引っ越してきてたりして・・・

 

(終)

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