4階から6階には幽霊話が多いようでして
これは今から十数年前、私がまだ小学生か中学生くらいの頃の話です。
ご存知の方もいるかと思いますが、マンションやビルの4~6階というのはいわゆる幽霊話が多いようでして、私の住んでいたマンションもちょうど6階でした。
もともと購入する時点で他の部屋より少々お安かったようですが、当時はかなりの人気物件だったそうです。
小さい一室ながら子供部屋や書斎、リビングなどに細かく分けて、この6階の部屋で両親と妹で暮らしていました。
ですが、ある時に書斎に置いてある椅子を、妹がクルクルと回して遊んでいました。
歳の離れた妹でしたし、倒れればなかなの重さのある代物だったので、心配になり声をかけました。
すると、なぜか真後ろから「なに?」と妹の声がしたのです。
ギョッとして後ろを向くと、妹が不思議そうにこちらを見ています。
見間違いかと苦笑しながら書斎に目をやると、椅子だけがクルクルと回り続けていました。
正直なところ、オカルトや怖い話の類は大好きでしたが、見間違いや気のせいということで、その場は無理に自分を納得させることにしました。
それから数日後の夜でした。
洗面所で歯を磨いていると、タタタタッと洗面所の横の廊下を何かが駆け抜けて行きました。
慌てて洗面所からそれが駆け抜けていった先を見ましたが、玄関のドアがあるばかり。
しかし私には、『髪を振り乱して走り抜ける子供の姿』がチラッと横目に見えたような気がします。
見間違いでも白昼夢でもなかったような気もします。
あの日の妹の服装はワンピースで、駆け抜けた子が着ていたのはモンペだったのですから。
もう姿を見ることはなくなりましたが、実は今でも時々、小さな足音が聞こえます。
それがあの子なのか別の子なのかは私にはわかりません。
ただ、もうそのマンションからは引っ越しているのですが、何かが付いて来てしまったのは確かのようです。
(終)