夜23時に鳴った予定外のインターホン

覗き窓 玄関

 

大学進学のために上京していた

マンションでの話です。

 

その日、

 

僕は部屋でテレビを見ながらも

漫画を読むという、

 

荒業を成し遂げていました。

 

すると、

ピンポーンとチャイムが鳴ったので、

 

なんとなく腕時計に目をやったら

23時を回っていました。

 

こんな時間に誰・・・?

 

当時、僕の知り合いで、

 

アポ無しに突然こんな時間に

やってくる友人はいなかったので、

 

何かの勧誘?と思い、

無視する事にしました。

 

無視して1分も経たないうちに、

またピンポーンとチャイムの音が。

 

再び無視しましたが、

不意に気になりました。

 

僕の住んでいたマンションは

オートロックだったので、

 

一階の入り口からもインターホンを

鳴らす事は出来るのですが、

 

部屋の前にある呼びチャイムでも、

インターホンを鳴らす事が可能です。

 

どっちからインターホンを

鳴らしているんだろうか・・・

 

一階に決まってるよな・・・

 

急に気になり始めた僕は、

 

テレビを消音にして、

部屋の入り口方向に耳を澄ましました。

 

無音。

 

しかし、

無性に嫌な予感がして、

 

僕は足音を立てずに

部屋の入り口に歩み寄り、

 

のぞき穴から覗いてみました。

 

・・・あれ?

 

のぞき穴から覗くと、

 

そこには半年ほど前に別れた

元カノが立っていました。

 

何しに来たんだ?

 

僕はチェーンは付けたまま鍵を開けて、

ドアを開こうとしました。

 

ググッ・・・ググ・・!?

 

ドアが開きません。

 

ドアの向こう側から、

力を加えられている?

 

何のイタズラだよと思いながら、

再びのぞき穴から覗くと、

 

外からも覗いていたらしく、

目ん玉がのぞき穴いっぱいに映り、

 

「うわっ、なんだよ!!」と、

 

ビックリしたのとイラっとしたので、

チェーンを外して勢いよくドアを押すと、

 

今度はスッとドアが開きました。

 

しかし、

そこには誰もおらず、

 

エレベーターも僕の住んでいた5階には

止まっていない様子。

 

途端に鳥肌が立った僕は、

 

すぐにドアに鍵をかけて、

部屋の中に戻りました。

 

何だ?幽霊?まさかな・・・

 

色々考えていて、

ふと自分の手に目を向けると、

 

左手の甲に青や赤や黒のボールペンで

グジャグジャっと、

 

色んな線を書いたような落書きが

出来ていました。

 

なんだこれ?と思いながら、

 

とりあえず元カノに連絡してみようかと

携帯を手に取ったのですが、

 

既に彼女のデータは削除済だったので

連絡を取る術もなく、

 

その日は友人と今起こった話をしながら

夜を更かしました。

 

次の日、

 

大学から戻って勉強机で勉強していると、

いつの間にか座ったまま寝入っていました。

 

起きたのは正確に記憶してないのですが、

深夜だったと思います。

 

ヤバイ・・・

全然レポートが終わっていないと思い、

 

慌ててレポートを仕上げていました。

 

あれ?

僕は左手が変なのに気づきました。

 

左手の甲から肘あたりまでにかけて、

 

太さ1センチ弱程度の黒マジックで、

直線が2本引かれていました。

 

寝ている間に自分で?

 

不思議に思ってその線をこすって

消そうとしていると、

 

バッ!!という、

 

服を思いっきりめくるような音が

後方からしました。

 

僕は根っからの面倒くさがりな性格で、

 

洗濯した服は部屋の一角に畳みもせず

山にしていたのですが、

 

間違いなくそちらから音がしたのです。

 

音がした瞬間、

 

ヒッ!?と声にならぬ声をあげた僕は、

即座に振り返りました。

 

その光景を見た僕は、

 

全身の血が一気に引いていったのを

今でも覚えています。

 

洗濯した服の山から、

元カノの頭だけがポッコリ出ていて、

 

無表情過ぎる無表情な顔で、

僕を一点に見つめていました。

 

「うわ、うわうわうわ!!」

 

部屋を全力で抜け出した僕は、

 

部屋を出たところで腰がぬけ、

その場でワンワン泣いていると、

 

同じ階に住む30歳くらいの女性が

何事かと出てきてくれたので、

 

僕はその人に必死にしがみ付き、

マジ泣きしながら、

 

警察!警察!!と連呼しました。

 

警察官が来た頃に、

僕はやっと呼吸が正常になり、

 

部屋に人がいると警察官に告げ、

僕の部屋に入っていったのですが、

 

部屋には誰も居ないよ?

と出てきました。

 

「服の山を確認しろ!」と言うも、

(命令口調になっていました・・・)

 

何も無いと言いながら、

服の山を鷲づかみにして出てきました。

 

翌日、

 

警察官に昨日の話の顛末を話すと、

パトロールをこれからするという話になり、

 

冗談じゃねえぞ!と思った僕は、

 

その夜は友人宅に泊めてもらい、

すぐにマンションから引っ越しました。

 

僕は頭がおかしくなったのだろうか?

本気でそう考える時期もありましたが、

 

どうしても僕の見たものが幽霊の類とは

思えませんでした。

 

(終)

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