両親がタブーにした幼い頃の俺の話
俺が5歳くらいの時の話。
両親と祖父が、兄と俺を連れて、
母方の祖母の墓参りに行ったらしい。
兄は父と一緒に近くの公園で遊んでいた。
いつもは俺も一緒になって遊ぶはずなのに、
その時に限って俺は母に付いて行ったそうだ。
幼かった俺にだけ見えていたもの・・・
母と祖父は墓参りを終えて、
偶然来ていた知り合いと話をしていたが、
不意にボ~っとある方向を見ている
俺に気が付いた。
普段からボ~っとしていることの多かった
子供だったらしいが、
何故かその時は凄く気になったという。
母「なんでそっちばっかり見てるの?」
母は俺に訊いてみると、
俺「あっちの方でお兄ちゃんたちが
遊ぼうって呼んでるの」
と言ったらしい。
それは、
兄が父と遊んでいる公園とは全くの別方向。
ふと疑問に思った母は、
さらに訊いたそうだ。
母「お兄ちゃんって、○○(実兄)?」
俺「ちがう。知らないお兄ちゃん」
俺と母の周りには、
話していた知り合いのおばさんと祖父以外、
誰も見当たらない。
母と祖父は気味悪がって、
俺を連れてすぐにその場を離れた。
墓参りに行ったその墓地は、
海沿いの丘の上にある。
そして・・・
俺が見ていたその方向には、
海に面した崖しかなかった。
その日の夜、
母が俺に詳しく話を訊いたらしい。
当時の俺が話した内容は・・・
『俺を呼んでいたのは数人の男女で、
年齢は当時の俺と同じくらい』
『こっち(崖の方)に来るように、
ゆっくりと手を振りながら呼んでいた』
という事だった。
そして次の日。
その話を母から聞いた父が、
俺から詳しく訊こうとしたそうだ。
・・・しかし、
俺は「そんなの知らない」の一点張りで、
母に訊かれた事も、自分で答えた事も、
全く覚えていなかったらしい。
俺は小さいながらに頭が良かったらしく、
記憶力も冴えていたという。
それなのに、
前日の事を覚えていないのはおかしいと思い、
その後は両親も祖父も、
その話には一切触れないようにしたそうだ。
(終)