夜中に部屋の中を走り回る子供が・・・
今でもたまに兄貴と懐かしむのだが、小学生の頃から中学ぐらいまでに体験した不思議な話。
俺が小学5年生ぐらいの頃、夜に寝ていると物音と人の気配で目が覚めた。
すると、常夜灯にほんのり照らされた薄暗い部屋をトタトタと走り回る小さい子供がいた。
もちろん、家族にそんな子供はいない。
絶対おまえやった!
俺はメチャクチャ怖くて隣で寝ていた兄貴を起こそうとした瞬間、その子供の顔を見て固まった。
なぜなら、どう見ても『小さい頃の俺』だったからだ。
お気に入りの青い半纏(はんてん)を羽織り、その下にはゴジラのイラストの入ったパジャマ。
間違いなく俺が小学2年生ぐらいまで愛用していた冬の寝間着姿で、部屋の中を走り回る小さい頃の俺がいた。
状況が理解できずに唖然としていると、隣で寝ていた兄貴が「うるさいな~」と不機嫌そうに首だけを起こし、そいつに向かって「おい!○○!(俺の名前)いいかげん寝え!」と一喝すると、すぐにまた寝てしまった。
その一瞬、兄貴に気を取られ、直後そいつがいた場所を見ると消えていた。
足音も止んで、部屋はシーンとしていた。
ふと我に返り、すぐに兄貴を叩き起こした。
寝ぼけながらも俺の顔を見るや否や、ビックリした様子ですぐに目覚めた。
そして兄貴は、「あれ?さっきおまえ子供やなかったか?え!?さっきの誰や!?」とテンパり、自分でも訳が分からない事を言っていた。
「いや!絶対俺やった!小さい頃の俺がおった!兄貴も見たろ!?」と俺は半泣きで絶叫する。
すると、「絶対おまえやった!だって、あの青の半纏にオカッパの髪型も顔も昔のおまえやん!」と兄貴もパニックに。
怖くなってすぐに親のいる部屋に行き泣きついたが、「寝ぼけてただけや」と相手にしてもらえず・・・。
結局その日からしばらくの間は、二人とも親の部屋で寝ていた。
その後は一切そいつを見る事はなかったが、たぶん俺が中学生になるくらいまでは存在していたんじゃないかと思う。
残念ながら俺の前にはあれっきり姿を見せなかったが。
もうすぐ30歳になる兄貴もはっきりと覚えている不思議な体験だった。
ふと思い出しては、一体何だったんだろう?と考えてしまう。
(終)