駅ホームで白い日傘をさしている女性
これは姉から聞いた話になる。
姉がまだ高校生だった頃、用事の為に行ったことのない駅での出来事だった。
季節はもう肌寒い秋だというのに、夏用のワンピースを着て、真っ白いレース柄の日傘を持っている女性がいた。
そしてその日傘、手に持っているのではなくて、日の当たらない駅のホームでさしていた。
姉は思わず「えっ?!」となっていると、ホームに電車が入ってきた時にその女性を見失ってしまったそうだ。
その不思議な光景を目にした出来事から数年が経ち・・・
姉に向かって言った事とは・・・
社会人になった姉は、通勤途中に人身事故が起きた電車に乗り合わせたことがあった。
「やだなあ・・・」などと思いながら窓の外を見ていると、運悪く『ご遺体』を搬出している最中で、さらには姉のいる車両の近くに搬出して安置していたという。
もちろんそのご遺体を見たくはなかったけれど、少しの好奇心でそちらの方を見てしまった。
すると、駅員や警察や消防の人に混じって、白いレース柄の日傘が見えた。
「まさか・・・?!」と思ってよく見ると、あの時に見た『夏用のワンピース姿の女性』がそこに立っていた。
姉はそこで怖くなったが、何故だかその女性から目が離せなかったという。
瞬きを一度すると、ご遺体の側にいたはずのその女性は姉が乗っている車両の近くまでやって来て、姉に向かって何かを言った後にニッコリと笑って消えたそうだ。
姉いわく、その日傘をさす女性はとても可愛らしかったと。
その女性が消える間際に何と言ったのかは分からなかったけれど、きっと「ほらね!」と言ったと思うと姉は言っていた。
でも姉自身、身近で亡くなった人を知らないし、その可愛らしい女性にも心当たりは無いという・・・。
(終)