僕らはここで終わりなんだから
子供の頃に体験した、怖いというより不思議な話。
俺は子供の頃、小さな村に住んでいて、どこにでもあるような小学校に通い、いつも同じ5人組のグループで遊んでいた。
毎日がとても楽しくて、たまに夜の11時に帰った時には親にめちゃくちゃ怒られたりと。
男は俺を含めて4人、女は1人。
余談だが、女の子はそこそこ可愛くて、みんなが狙っていた。
ある年の大晦日、俺たちは「皆で年を越そう」となり、5人組の一人の家に集まっていた。
俺が見ていたのは幻だったのだろうか
うちの親は過保護だったが、珍しく泊まりに行くのを許してくれた。
必死にどう説得するか考えていただけに少し拍子抜けした。
だけど、そいつの家は今思えばおかしかった。
大晦日の夜だというのに、両親が家に居なかったのだ。
結局、夜中まで雪合戦などをしていたけれど、いくら家の庭だからといって、もうすぐ日付が変わりそうな時間なのに注意もされない。
そして、一人が腕時計を見て「あ!いよいよ年が変わるぞ!」と言った時、みんなで空を見上げた。
どうしてそんな事をしたのかは分からないが、幼いながら星空にロマンを感じていたのだろう。
「来年も楽しく過ごせるといいな」と、俺はぼそっと呟いた。
すると、グループで一番頭のいい奴が変なことを言うんだ。
「無理だよ。だって僕らはここで終わりなんだから」
その当時、何かの絵本でそんな言葉を見たことがあって、俺は何で今その言葉が出たのかと考えていた。
終いに俺は、本当にもう会えないのかと思って泣き出してしまった。
だけど、他の3人はみんな知っているような顔をしていた。
「みんな、どこか行くの?なら俺も・・・」
「だめ。K(俺)はお終い。次の子が待ってるから」
気が付くと、俺は地面に倒れていた。
どうも屋根の雪下ろしを手伝って転落したらしい。
雪がクッションになり、ちょっと気絶しただけで済んだ。
でも次の日から、村は俺の知る村ではなくなっていた。
学校の名前、通っていたそろばん塾、行きつけの駄菓子屋、全部が変わっていた。
クラスの奴らは変わっていなかったけれど、俺たちのグループの奴らは誰も居なかった。
他のクラスメートに訊いたら、「引っ越した」だの「死んだ」だの「誰だよソレ」だの様々な答えが返ってきた。
俺が見ていたのは幻だったのだろうか。
今でも俺は大晦日になると庭で星を見る。
そして、この事を思い出す。
けれど不思議なことに、今では「そういう奴らがいた」としか思い出せない。
思い出は残っているけれど、あいつらの顔や声がどうしても思い出せない。
(終)