万引きを繰り返していた者の結末 2/2

本

前回までの話はこちら

その後、東京の大学に進学した俺は、成人式のために久々に帰郷した。

 

そこで、地元に残って働いていたAから「Cが死んだ」との報告を受けた。

 

Cは高校を辞めた後、自宅に引きこもっていたが、ある時に自宅で本棚の下敷きになって死んでしまったらしい。

 

「本棚の下敷きって、こっちで強い地震でもあったのかよ?」

 

「ねえよ。そこが不思議な点で警察も困惑していたけど、結局Cが本棚を動かそうと留め金を外したら何かの衝撃で本棚が倒れてきたってことになってた」

 

「あんな大きな本棚を?」

 

「誰も納得してないけど、警察もニートの不審死に時間を掛けられるほど暇じゃないからな。それに他殺を思わせる証拠は何も見つからなかったらしい」

 

「へえ」

 

「だけど俺はこう思ってるんだ。Cは怨念によって殺されたんじゃないかって

 

「怨念?」

 

「あいつの本、万引きしたものばっかだっただろ?だからあいつのせいで店を畳んで死んでしまった人達の亡霊。おまえの近所の書店のおじさんみたいな人だ」

 

「やめてくれよ。冗談だろ」

 

「まあでも、亡霊によって殺されたと信じたくなるくらい、不審点の多い死に方なんだよなあ」

 

と、こんな会話をAと交わした。

 

Cが死んだことについて特別な感情は湧き上がって来なかったが、Aが言う”亡霊云々”の話が妙に気になった。

 

実家に戻って色々と物を整理していたら、そこである物を見つける。

 

中学時代にCから借りた本だった。

 

Cと疎遠になってから急に読み難い本になって返せずにいたが、久々にパラパラめくっているとなかなか面白い。

 

そのままパラパラと読み進めていく。

 

だけど、急に体が重くなった。

 

心臓の動機が激しくなる。

 

明らかにおかしかった。

 

本の内容は寒気のするようなホラーではなく、むしろ感動系。

 

でも寒気が酷い。

 

なぜか本を読み終える気にはならなかった。

 

色んな意味での金縛りだ。

 

2時間くらい顔を真っ青にしながら読み終えたら、急にその呪縛から解放された。

 

急いでその本を窓から投げ捨てたが、次の日に起きてみたら枕元にあった。

 

こんなことがあってAとBに相談すると、二人とも同じような体験をしていた。

 

Bは借りた本の1ページ目が真っ黒だったらしい。

 

そのページを見せてもらったが、それは引き込まれるような真っ黒。

 

印刷で出せる色ではなかった。

 

落丁かと思ったが、年月も経っているから編集部に相談しても分からないの一点張りだったらしい。

 

そしてやはりBも、読んでいる途中の金縛りにも遭っていた。

 

一番悲惨だったのはA。

 

Aは根っからのホラー好きで、読んでいた本もリングの小説版。

 

小説の中で貞子は出てくるわ、読んでいる途中に金縛りに遭うわで、「もういっそ死なせてくれ!」と本気で叫んだらしい。

 

なにより怖かったのは、ほとんど同じ日に3人がCから借りた本を見つけたこと。

 

何かに引き寄せられたみたいに・・・。

 

そしてAの提案で、この本を御祓いして焼いてもらうことにした。

 

近くの神社で事情を話し、住職さんに御祓いをしてもらった。

 

そこの住職さんは御祓いに関しては経験が浅いらしく、憑いているのが例のおじさんかどうかまでは見抜けなかった。

 

その後、俺らはCの家へ行くことにした。

 

住職さんにCのことを話すと、「なるべく手遅れにならないうちにCの身内を連れて来た方がいい」と言われたからだ。

 

手遅れの場合は、もっと経験のある偉い神主さんを呼んでくれるらしい。

 

それでCの母を連れて行こうと、唯一Cの葬式に出たAの案内でCの家へ行った。

 

お母さんが出迎えてくれて、Cの仏壇に手を合わさせてもらった。

 

お母さんは、俺らとCが喧嘩別れしたことを知れないようだった。

 

Cが集めていた本のことを聞くと、すんなりと答えてくれた。

 

何冊かは取ってあるが、残りのほとんどはブックオフに買い取ってもらったらしい。

 

穏やかに時が過ぎて、いざ御祓いの話を切り出すと、お母さんの顔つきが変わった。

 

御祓いに行くよう説得するも、行かないの一点張り。

 

息子がそんなことが原因で死んだとは認めたくない、そういうことだった。

 

結局、御祓いへは行かすことが出来ずにCの家を後にした。

 

でも中学の時に見た、どちらかといえば太り気味なCのお母さんが見る影も無くやせ細っているのを見ると、もちろん息子が死んだことも原因だろうが、既に手遅れの状態であることをCのお母さんは悟っているのではないかと俺ら3人は考えてしまった。

 

その後は特に、本を読む時におかしな現象は起きていない。

 

その道に進んだBが言うには、「あれは一種の集団催眠のようなものではないか?」と。

 

ただ最近、帰省して近くのブックオフに行く機会があったのだが、そこで並ならぬオーラというのか、霊感がほとんど無い俺でも“触ってはいけないと思わせる古本”があった。

 

あれは絶対に、Cが万引きし、死後に売り払われた本の一つだと確信した。

 

おそらくあのブックオフでも、何か良くない現象が起こっているだろう。

 

今度時間がある時に調べてみたいものだ。

 

最後に、万引きをしたことのある奴に言っておく。

 

万引きした物は、なるべく早くに捨てた方がいい。

 

出来れば御祓いをしてから。

 

(終)

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One Response to “万引きを繰り返していた者の結末 2/2”

  1. 匿名 より:

    全員Cから本を借りパクしてたってこと?
    本を盗んだと見なされたからおじさんが来たのかな。

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