4歳の弟にかかってくる電話

黒電話

 

俺は高校に入学してすぐに、クラス内のちょっとしたトラブルに巻き込まれて不登校になった。

 

昼間は家でテレビを見たり、ゲームをしたり、年の離れた弟の面倒を見て、夜は近所の公園に行ってスケボーをしたり、友達の家に遊びに行ったりしていた。

 

ある時、いつものように弟と二人で昼飯を食いながらタモリを見ていた。

 

母は病院に行っていて、家には弟と二人きりだった。

 

飯を食い終わってボーっと小堺を見ていると、弟が突然「あ、でんわ。でんわしなきゃ」と言い出した。

 

その当時、弟は4歳。

 

「え?どこに?誰に?」と聞くが、「でんわ、でんわ、でんわ・・・」と繰り返しながら、電話が置いてある廊下に飛び出して行った。

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うん。そうだよ。あそびにきてね。

慌てて追いかけると、弟は電話の置いてある台に精一杯手を伸ばし、「ねえ、でんわとって!でんわ!でんわ!」と騒いでいた。

 

「だめだよ。誰に電話するの?ママならもう帰ってくるよ?」と言ったが、今度は「でんわ!はやく!でんわ!」と泣き喚き始めた。

 

参ったなぁと思いながら、無理やり弟を抱きかかえてリビングに戻ろうとした時だった。

 

プルルルルルル・・・と電話が鳴った。

 

その音を聞いた瞬間、「でんわ!こうた(弟)のでんわ!」と凄い勢いで暴れだした。(名前は仮名)

 

俺は弟をガッチリと掴んだまま、「わかった。ちょっと待って。先に兄ちゃん出てからね」と言いながら受話器を取った。

 

「はい、○○です」

 

『・・・あ、あの、こうたちゃんお願いします』

 

聞き覚えのない、40~50歳くらいのおばさんの声だった。

 

そんな人が4歳の弟に何の用なのか?と不信に思い、「あの、どちらさまですか?」と続けた。

 

『・・・とも』

 

「えっ?友達?」

 

聞き返したと同時にブチっと通話は切れた。

 

戸惑いながら受話器を置くと、弟がキョトンとした顔でこっちを見ている。

 

「なに?どっかのおばさんに番号教えたの?さっきのおばさんに電話しようとしたの?」と聞いてみたが、「しらない。わかんない。いやだ」の繰り返しで真相は分からなかった。

 

ナンバーディスプレイを確認すると、地元では見たことのないような番号だった。

 

何回か掛け直してみたが、ずっと話し中で一向に繋がる気配がない。

 

そうこうしているうちに母が帰宅したので一連の流れを説明すると、母も身に覚えがないらしくて気味悪がっていた。

 

その日から、その番号から時々電話がかかって来るようになった。

 

俺や両親が出てもすぐにブチっと切られ、掛け直すと話し中で繋がらない。

 

電話が鳴る前と鳴った後に弟が、「でんわ!でんわ!」と騒ぐのも正直怖かった。

 

また、弟が間違って電話に出ないように、椅子を使っても届かない場所に電話も移した。

 

それから何週間か経ち、そろそろ警察に言おうと話していた矢先だった。

 

昼間、俺がトイレにいる時に電話が鳴った。

 

その日も母は不在で、弟と二人きりだった。

 

「あ、あのババアかも!」と思ったが、「まあ、どうせ弟は電話に届かないし、いっか」と、そのまま着信音が鳴り止むのを待っていた。

 

すると、ガン!!という音の後に、「もしもし?もしもし?」と弟の声が聞こえた。

 

驚いてトイレから出ると、線を引っ張ったのか電話が本体ごと床に落ちていた。

 

その横で弟が楽しそうに、「うん。そうだよ。あそびにきてね」と電話をしていた。

 

そして、その日から弟が「でんわ!でんわ!」と騒ぐことも、見知らぬ番号からの電話もなくなった。

 

その番号に電話してみても、話し中から現在使われていませんになった。

 

あれから7年が経った。

 

弟は全く記憶に無いそうだ。

 

俺や両親にその事を言われる度に、「はいはい、嘘乙」という感じの顔で溜息をしている。

 

(終)

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