昼休みの図書室で起きた不可解な出来事
個人的に不可解な思いをした話である。
それは10年以上も前、中学1年だった頃の事。
当時、昼休みは学校の図書室で過ごすのが日課になっていて、その日もそうだった。
予鈴のチャイムが鳴り、教室に戻るか・・・というところで、図書室の中辺りで騒ぎがあった。
何事かとそちらに目をやると人だかりが出来ていて、そこでどうやら誰かが倒れたらしかった。
何がどうなっているのか
人だかりの隙間から覗くと、倒れて痙攣している男子学生とクラスメートのM君が見えた。(男子学生の顔は見えなかった)
M君は倒れて意識もないであろう男子学生に、「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」と謝っていた。
場所が図書室であることからも分かるように、M君は大人しくて決して人に危害を加えるタイプではなかった。
その為、どのような状況なのか自分にはイメージが出来なかったが、M君がうっかり男子学生にぶつかるか何かして、転んで打ちどころでも悪くてこの様な状況になっているのだろう、と勝手に解釈した。
教師を呼びに行った生徒がいる事と、予鈴から何分か経っている事もあって、自分は教室に戻ることにした。
今考えると冷静すぎるというか、冷たい対応だったが、当時は自分に出来ることは何もないと思ったし、授業に遅れて怒られるのも嫌だったし、面倒事に首を突っ込むのも嫌だったのである。(当時の自分は杓子定規な頭をしていて、『遅刻=悪』だった)
これに関しては謝る。
M君、ごめんなさい。
教室に戻った後、本礼のチャイムが鳴っても、M君も教師も教室に来なかった。
しばらくして、教科の教師ではなく担任の教師が教室に入って来た。
そして担任はクラス全体に、「昼休みに図書室に居た奴はいるか?」と尋ねたので、自分は素直に手を挙げた。
さらに担任は「何があったか知っているか?」と尋ねてきたので、『M君が男の子に謝っているのを見ました』と答えようとした・・・。
しかし、「M君が」と口を開いたところで、「お前はクラスメートが倒れている所を見捨ててきたのか?薄情な奴だな」と、怒りというより見損なった様に担任に言われた。
正直、言われた事の意味がよく分からなかったが、話を整理してみると、どうやら図書室で倒れていたのはM君で、M君は病院に運ばれたという。
翌日、M君はいつのものように登校して来たが、クラスで薄情者の烙印を押された自分には、何がどうなっているのか調べる事は出来なかった。(M君が倒れたのはてんかんだったらしい)
ただ一つ誓うが、図書室で倒れているのがM君だと分っていたならば、いくら薄情な自分とはいえ、一人で教室に戻るなんて事はしなかった。
(終)