じいちゃんと飼い犬のサクラの最期
これは、じいちゃんと飼い犬のサクラの不思議な話。
うちの犬の妹のサクラを、栃木にいるじいちゃんが飼っていた。
だが、5年前くらいにじいちゃんは肺ガンになってしまい、ばあちゃんも一人では飼えないということで、母の友人宅で引き続き飼ってくれることになった。
サクラは引き取られてからも幸せに暮らしていて、元々そのお宅にいた犬とも仲良くやっており、たまに会いに行ってもお利口さんだった。
連れていってしまった?
じいちゃんの闘病生活は長く続き、2年くらい入退院を繰り返していたが、残念ながら亡くなってしまった。
僕ら家族は、千葉から栃木のじいちゃんの葬儀場に向かい、通夜を終えた。
その日は葬儀場の宿泊部屋に家族やら含めて8人くらいで泊まっていたが、寝ようとした時に母の携帯電話が鳴った。
電話の相手は、サクラの現在の飼い主さんだった。
電話の向こうからは微かに声が聞こえていた。
「大変だよ・・・サクラが・・・サクラが・・・」
そんな内容だったと思う。
後日に話を聞いたが、庭でひとしきり吠えた後に、ふと庭を見るとサクラが倒れていたそうだ。
すぐ病院に連れて行くもすでに息はなく、検査をしても毒物や病気の疑いもなかった。
直前までは全くもっての健康体だったそう。
ちなみに母に電話があったのは、病院で検査などをしてもらった後だった。
もしかすると、じいちゃんが寂しくなってサクラを連れていってしまったのか、もしくはサクラが付いていってしまったのか、と思うしかなかったが、たまたま葬儀場からの帰り際の坊さんがいてくれたので話をしてみた。
坊さんは、「そういうこともあると思います。ただし、おじいさまを悪者のように思うのだけはやめてあげてくださいね」と優しく話をしてくれた。
僕自身も正直、連れていってしまったとしか思えなかったが、最初から不思議とじいちゃんは悪いことをしちゃったなとは思っていなかった。
こんな事があってから、命に対して色々と考えることが増えたが、『死=不幸』しかないとは思わなくなった。
向こうの世界があるのなら、2人で仲良く旅立っていったと思うし、一昨年はばあちゃん、去年と今年初めでサクラの兄妹の2匹(うちで飼っていた)がそれぞれ旅立ったので、今はみんなで仲良くしていることを願っている。
(終)