田んぼに漂っていた白い物体を見つめていると
これは、俺が小学生の時の体験談。
俺の母方の実家は山の中にある。
けれど、今では婆さまが亡くなって、爺さまは母の姉の家に移り住んでいるので、もう行くこともないと思うが・・・。
それは夏休み中のこと、親子連れだって田舎へ遊びに行った時に、少し怖い体験をしたことが何度かある。
頭をゴツンと
真夏の炎天下、虫取り網を片手に近くの林へ、虫を捕りに行くため畦道を歩いていた。
ふと田んぼを見ると、なにかモヤモヤとした陽炎の中に『白い物体』が漂っている。
何だろう?と、ぼんやり見つめていると、全身の力が抜けて頭がぼんやりとしてきた。
それまでに一度だけ熱射病になったことがあったけれど、あの時とは全く感覚が違っていた。
頭から血の気が失せていく感じ。
その時、軽トラで通りがかった近所のおじさんが俺の異変に気づいてくれたのか、走り寄ってきて俺を抱き上げると、田んぼの中に立たせた。
しばらくすると、頭のぼんやりが消えていき、目の前にかかっていた白いモヤのようなものが晴れていくのを感じた。
見ると、さっきまで白い物体が漂っていた場所には何もなかった。
「あぶねぇ、ユウダチは見ちゃならねぇ」と、頭をゴツンとやられた。
その後、おじさんに軽トラで家まで送ってもらい、そのことを婆さまに話すと、婆さまはおはぎを作り始めた。
3つ作ったおはぎの1つは俺に、1つはお世話になったおじさんに、最後の1つは田んぼに放り込んだ。
そして最後に、頭をゴツンとやられた。
農作業から帰ってきた爺さまにも、そのことを話すと頭をゴツンとやられた。
あの白い物体は謎だけれど、同じ日になぜ3回も頭をゴツンとやられないといけないのか、その方が謎だった。
(終)