山道をドライブ中に見つけた林道にて

山道

 

これは、とある林道で不可解な体験をした時の話。

 

ある日のこと、友人と山道をドライブ中に林道を見つけた。

 

二人とも山が好きな方なので、どちらからともなく「少し登ってみよう」ということになり、車から降りた。

 

友人は植物が好きで、何かを見つけては楽しげに眺め、あれこれ説明してくれた。

 

そうして30分ほど登った頃、彼が急に立ち止まった。

 

また何かを見つけたのだろうと思ったが、黙ったまま動かない。

 

彼は時々、妙な体験をすることがある。

 

なので、何か見えたのか?などと思い、ドキドキしながら尋ねようとした。

 

だが、それを察したかのように、無言のまま人差し指を口に当て、真顔で俺を睨んだ。

 

緊張しつつ友人を見つめていると、眉間に皺を寄せて目配せをした。

 

『ふたつ、ふ~た~つ~』

 

藪の奥から間延びした小さな声がした。

 

友人は険しい顔をしている。

 

『たでる~たで~る~~』

 

たでる・・・?

 

食べる?

 

え?どういうこと!?

 

パニックで強張った俺の体を友人は無言で反転させ、来た道を戻るよう促した。

 

俺は嫌な汗で背中も掌もビッショリだ。

 

急いで戻る林道の入口まで、その声は前後左右に飛び交いながら付いて来ていた。

 

人間には到底無理な動きで・・・。

 

車まで戻れた時、俺は自然と涙が出た。

 

(終)

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