同じ名前の男の子たちとの奇妙な縁
これは、名前にまつわる奇妙な体験話。
うちの父は転勤族だった。
私が物心ついた頃から中学生になるまで、2~3年おきに全国を転勤していた。
そして、転校する度に『同じ名前の男の子』がいた。
顔も性格も全然違うけれど、伊藤明くん(仮名)みたいな、名字も名前も普通の組み合わせだから最初は気づかなかった。
小4で転校した時、「あれ?前の学校にいた男子と同じ名前の子がいるなあ」と思って、母に言った。
すると、「その前の学校でも、幼稚園の時にもいたわよ。明って名前が流行ってるのね」と言われて、そういうものかと思った。
中学校入学前に、また引っ越した。
母の実家近くに家を購入して、父は単身赴任になった。
中学校にも伊藤明くんはいた。
高校の伊藤明くんには告白されて、私も好きなタイプではあったけれど、なんとなく断った。
大学の伊藤明くんや、バイト先の伊藤明くんとは、なるべく距離を置いた。
なんとなく気持ち悪くなってきたから。
会社の伊藤明さんとは電話やメールのやりとりは頻繁だけれど、会ったことはない。
趣味で知り合った名前が明ではない伊藤さんと付き合うことになって、数年後に結婚した。
そして今、私は妊娠中。
なんとなく予想はしていたけれど、子供は男の子で、先日夫から「子供の名前は明がいい」と言われた。
私と夫がニコニコしながら「明くん!」と、子供に呼びかけている夢を見たそうで。
縁がある名前なのかという気持ちが半分、少し怖いのが半分。
夫からは名前は最終的に私が決めていいと言われたけれど、まだ迷っている。
(終)