過去に時間が戻った経験をした時の話
これは、タイムリープにまつわる話。
私は一度だけ、”過去に時間が戻った経験”をしたことがある。
ある月曜日のこと、会社で凡ミスをして、それが想像以上に大事になってしまった。
数日の間は後処理に終われ、あちこちに頭を下げ、夜遅くに半泣きで家に帰る日々が続いた。
そんなある時、途中で霧雨が降り出して、服や髪が湿り、濡れているのか泣いているのか、よくわからなくなってきた。
このまま家に帰って家族に平気そうな顔するのも嫌で、スーツもグチャグチャ。
「もういいや」と思い、途中の路地の軒下に腰を下ろした。
その時、携帯にメールが届いた。
会員になっている某アーティストのライブのお知らせと、友人からの週末の誘い。
「ああ、久々にライブやるのか。行こうかな」
「たまには友人と遊んで気晴らしするか」
そんなことを思いながら、でも返信する元気もなく、ウトウトと寝てしまった。
起きると、なぜかパジャマのまま自宅のソファで寝ていた。
「あれ?いつの間に帰って着替えたんだろ?」
時計を見ると、もうすでに9時。
「遅刻じゃん!」
会社に電話しなきゃ、シャワーを浴びなきゃと慌てていると、母が「昨日、テレビ見ながら寝ちゃって。ま、今日は休みだからいいけど」と言う。
不思議に思って携帯の日付を見ると、数日前の日曜日。
狐につままれたまま朝食をとり、しばらくボーっとしていた。
訳がわからないまま月曜日に恐る恐る会社に行くと、何事もないままの状態だった。
あの恐るべき凡ミスをする前の状態。
それから数日後、見た覚えのあるメールが2通届いた。
ライブのお知らせと、友人からの誘い。
長い夢だと思っていたが、メールに関しては現実のことなので、今でも変な記憶となっている。
(終)