俺たちが秘密にした胸糞悪い体験 2/2

 

Bが「オギソだ!」と言った。

 

当時の俺にはバケモノの名前にしか

聞こえなかったが、

 

実際には『小木曽』という、

 

地元では有名な障害者の

名前だったらしい。

 

俺はオギソなる人物の詳細は

知らなかったが、

 

声からしてヤバいのは、

子供ながら理解出来た。

 

だが、俺たちは建物の中にいたので、

ビビりつつも少し余裕はあった。

 

「オギソがいなくなるまで

エロ本読んでいようぜ」

 

とBにエロ本を読み続ける

口実を与える事も出来た。

 

だが、

状況は予想より悪かった。

 

オギソの声は全く、

遠くなることはなかった。

 

それどころか、

少しずつ近付いて来た。

 

そして、あろうことか、

 

我々の頭上からドアノブを

回す音が聞こえてきた。

 

鍵が開いてなかったもう一つの扉を

開けようとしていたのだ。

 

俺たちは完全に萎縮して、

 

懐中電灯を消して黙り込む

くらいのことしか出来なかった。

 

幸い、彼も鍵を持っている

わけではないらしく、

 

ドアは開かなかった。

 

だが奇声は止まなかった。

 

そう、俺たちが侵入した、

もう一つの扉は開いているのだ。

 

俺たちは息を潜め、

隠れる場所を探した。

 

こうなった以上、

講堂から逃げることは出来ない。

 

散乱している机の中にも、

隠れるような場所は無い。

 

この階の二階に隠れるしかなかった。

 

講堂と同じく、

 

二階は下の机が散乱した部屋を

見下せる構造になっていた。

 

逃げようと思ったが、

 

オギソが開けようとしていたドアは、

大量のガラクタに塞がれて開かなかった。

 

俺たちは息を潜めて、

ガラクタの隅で小さくなっていた。

 

二階には隠れられそうな物陰も無く、

覗き込まれたら即座にアウトだった。

 

やがて、

 

奴の声が遂に部屋の中へと

侵入してきた。

 

天井に懐中電灯の光が

映るのが見えた。

 

もちろん俺たちのものではない。

 

オギソの懐中電灯だった。

 

俺たちを探しに来たのか?と思う。

 

俺たちは既に半泣きだった。

 

ただ、声は出さず、

息も最低限に抑えていた。

 

下でオギソはなにやら作業を

しているようだった。

 

椅子を激しく蹴り飛ばす音や、

何かをする音が聞こえていた。

 

突然、

オギソとは違う叫びが響いた。

 

その声は女。

 

しかも、

俺たちと同じ年頃くらいの声だった。

 

ぎゃーぎゃーと泣き声で、

 

今思えば「痛い」とか「助けて」とか

叫んでいたように思える。

 

下で何かを蹴ったり叩いたり、

 

それだけではない不気味な音が

沢山聞こえたような気がした。

 

だが俺たちは萎縮しきっていて、

それを確かめる事は出来なかった。

 

そのまま何時間も、

 

オギソとその女の声を聞き続ける

ことしか出来なかった。

 

女の声は途中で止んだように思えた。

 

女の声が止んでからどれだけ経ったか、

オギソがようやく動き始めた。

 

行きと同じく、

机を蹴り飛ばしながら。

 

ドアノブを滅茶苦茶に回しながら。

 

声は少しずつ遠ざかりながら、

 

そして俺たちの隠れている

二階の近くの屋上を通って、

 

そしてまた遠ざかっていった。

 

最初、

俺たちは動かなかった。

 

罠に思えたのだ。

 

そのまま何時間もそこにいた。

 

そして、

やがて眠っていた。

 

目を覚ますと、

 

窓に打ち付けられた合板の隙間から

光が見えた。

 

もう朝だということが分かった。

 

オギソの声も、

もう聞こえなかった。

 

俺たちはようやく立ち上がると、

一階に降りた。

 

そこには、

血と大量の汚物が転がっていた。

 

それだけだった。

 

女がどこに行ったのかは

分からなかった。

 

俺たちは皆、

そこで吐いた。

 

そして、

 

何か悪い事をしたような、

後味の悪さに襲われていた。

 

結局、俺たちは無事、

家に帰ることが出来た。

 

Aの親にも何も言われる事は無かった。

 

オギソを見たという話も

あまり聞かなくなり、

 

俺は一度もオギソを見ることは無かった。

 

だから、俺たちはあれを

秘密にすることにした。

 

一つだけ忘れられないTV番組がある。

 

それは他愛もない番組の間の

地方ニュースだった。

 

アナウンサーが俺たちの住む

町の近くで、

 

同年代の女の子が行方不明に

なったことを知らせていた。

 

(終)

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