トイレの中で見つけたメッセージ
浮気をしたのが彼女にバレて2週間。
ずっと連絡の無かった彼女が、
やっと部屋にあげてくれた。
でもお互い気まずくて、
一言も口を利けないまま、
時間だけが過ぎていく。
僕はその空気に耐えられなくなって、
トイレに逃げ込んだ。
ふと、脇を見ると、
トイレットペーパーの端には
赤いペンで『和也へ』と書いてあった。
なんだろう。
ドキドキしながら紙を引き出すと、
そこには彼女からのメッセージが
書き込まれていた。
メッセージは何行にも渡っていた。
僕は紙を引っ張り出して、
噛みしめるように読んだ。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
由美より
あなたは私を裏切った それは事実
でももうすべてリセットしていいと思うの
あなたと過ごした宝物のような日々
それが私にとって大切だと気づいたから
なにもかもぶち壊してしまうこと
許されないことだもんね
あなたが浮気していたことは
全部忘れてしまえるわ あの娘と
あなたとの関係もこれで帳消しってこと
にしてあげる お互いつらかったよね 私と
あなたは十分に苦しんだからこれから楽
しんじゃおうよ 一緒にね
和也へ
△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△
涙が溢れてきた。
今、このトイレの扉の外には、
由美が待っている気配がする。
早くここから出て、
彼女を抱きしめてあげよう。
(終)
解説
トイレットペーパーに書かれている、
というのがポイントである。
彼女からのメッセージは、
紙を引き出しながら書かれている。
つまり、
正しくは『下から読む』。
扉の向こうには彼女が待っているが、
男は出てはいけない・・・