返事が書かれる不思議な日記帳

 

ある日、

俺は不思議な日記帳を手に入れたのだ。

 

手に入れた場所はデパート。

 

普通に売られていたものだった。

 

何が不思議かといえば、

その日記に書き込むと、

 

数日後に誰かからの返事が

書き込まれているのだ。

 

最初は誰かのイタズラかと思った。

 

でも一人暮らしのこの家には、

誰も入って来ないはずだ。

 

それに、部屋の押入れの隅や

駅のコインロッカーなどの、

 

かなり特殊な場所にしまっていても

ちゃんと返事は来る。

 

少し薄気味悪いことに、

 

絶対に自分しか知らないであろう

エロ本の隠し場所に隠しておいても、

 

数日後には返事が来るのだ。

 

最初のうちは正直怖かった。

 

でも、

 

昔に母親から虐待を受けていた俺は、

対人恐怖症で友達がいなかった。

 

だから初めて友達が出来たような感覚になり、

色々と会話するうちに親しくなっていった。

 

親しくなった一番の理由は、

共通点の多さかも知れない。

 

性別も身長も体重も、ほぼ同じ。

 

さらには、

 

昔に母親から虐待を受けていたことも

共通していた。

 

唯一の違いは、

俺は虐待されていた記憶があまり無いが、

 

そいつは虐待の記憶が鮮明で、

かなり深刻な状態なのだとか。

 

いつしかそいつに友情をもった俺は、

 

「一緒に頑張ろうぜ！」

 

と言葉を贈った。

 

でもそいつからは、

予想外の返事があった。

 

「その程度で済んだお前が許せない」

 

と書かれていたのだ。

 

驚く･･･俺。

 

さらに、

 

「絶対に殺してやるから」

 

とまで書かれていた。

 

それから数日後、

俺は自殺してしまった。

 

（終）

解説

俺は虐待され続けたショックから、

もう一人の自分を作り上げてしまった。

 

いわゆる、

多重人格（二重人格）である。

 

辛い記憶から逃れるために、

脳がとった防衛策が自殺だったのだろう。