トイレの個室で用を足していると
これは、俺の友人が幼稚園の時に体験した話。
仮に、友人の名前を井上とする。
その日、井上は幼稚園の行事で遠足の定番と言われるような所へ行った。
バスで現地に行き、井上ら園児は屋内ホールのような場所で先生から諸注意を受けた。
その時、井上は急激な便意に襲われたそうだ。
当時幼稚園児の井上は我慢できるはずもなく、先生にトイレまで案内してもらった。
伸びて来る白い手
トイレの個室で用を足していると、「バンバンバン!」と誰かがドアを強く叩いた。
「だれー?!」と聞いたのだが返事はなく、ひたすらドアを叩いてくる。
腹を立てた井上は、ドア下の隙間を覗き込んだ。
すると、そこには”裸足の足”があった。
大きさはその当時の自分と同じくらいと言っていたので相当小さかったのだろう。
しかし、その足は物凄く白かったと言う。
覗き込んだ瞬間に「ドガッ!」という音がし、今度は”白い手”がドアの上に指をかけてきた。
井上は当時から気が強かったらしく、「だれだよ!おまえぶんなぐるぞ!」と何度も言ったらしいが、白い手はどんどん壁を伝って迫ってくる。
とっさに下の隙間を見ると、足は背伸びはおろか微動だにしていない。
そう、まるで手だけが伸びているように。
ついには、白い手の肘から先が完全に自分側まで来ていた。
井上の恐怖は限界に達したらしく、両耳を押さえて縮こまるような姿勢で叫んだ。
「うああああああああ!!!」
すると、先生がすっ飛んできた。
井上は先生に誰か居たかと尋ねたが、トイレの中には誰もおらず、トイレから出て行った人も居なかったそうだ。
(終)