入院中、深夜に煙草が吸いたくなり喫煙所へ
これは、入院していた時の話。
ちなみに俺は喫煙者。
その病院では喫煙スペースが地下にあり、そこはガラスで仕切られ、エレベーターホールが一望できる場所だった。
ある日の深夜、一服したくなりそこへ行くと、先客がいた。
その先客はいつも顔を合わす人(以下、田村さんとする)だったので、この時もいつものように雑談していた。
霊魂の存在を信じるきっかけに
しばらくすると、エレベーターがゆっくりと降りてきた。
さっきまでは田村さんが入院している階に停止していた。
なぜかそれだけははっきりと覚えていた。
そして、エレベーターは俺たちがいる地下フロアへ降りてきた。
扉はまだ開いていない。
「ねぇ、このエレベーター、誰もいなかったら怖いですねぇ」と話しかけると、田村さんは「そうですなぁ。イヤですなぁ」と返す。
扉が開いた。
よかった、人間だ。
そう思って見ていると、医師と看護師、それに家族らしき人とストレッチャーが運ばれていた。
ストレッチャーを見ると、横たわる人の顔には白い布が掛けられており、あぁ、亡くなったんだな・・・と思いながら家族らしき人に視線をやると、俺の思考は混乱した。
なぜならその家族らしき人は、今俺の向かいで一緒に煙草を吸っている『田村さんの家族』だったからだ。
田村さんの病室へ遊びに行った時に居たので顔は覚えていた。
状況が理解できない俺は田村さん、「ねぇ、あなたの他に身内さんが入院してたの?」と言おうと視線を変えると、田村さんは目の前からいなくなっていた。
えっ!?と思った俺は辺りをよく見る。
どこにも田村さんは見当たらない。
もしや・・・と思って煙草を灰皿に捨てて、家族らしき人へ駆け寄る。
そして、「あの・・・田村さん、ですよね?」と聞いた。
すると家族らしき人は、「あ、あなたは・・・。そうなんです。ついさっき亡くなりました」と言われた。
こういう事があって以来、俺は霊魂の存在を信じるようになった。
(終)