最上階から「さぁ飛ぶぞ!」と身体を乗り出した時
これは、私が『自殺を決行』した時の話。
今から8年前、命に関わる職場いじめに遭い、同時に自分の人格全てを否定されました。
私は遺書と遺言(保険証書の置き場や貯金の渡り手等)を財布に入れ、セキュリティの甘い古いマンション(賠償金が安いかと思った)の最上階の通路にいました。
酒と睡眠導入剤のおかげか、変なテンションで「さぁ飛ぶぞ!」と身体を乗り出した時、ふと下を見ると・・・いました。
先客。
アレは数分後の私
でも、おかしいのです。
その先客、今の私と同じ髪型に同じ服。
しかも私が着ている服は非売品なのです。
同じ服を着ている人などいるはずがありません。
途端、『あの世』という新天地を求めて飛ぼうとする高揚した気持ちが一気に冷めました。
そして、「先客?誰?っていうか何かおかしい」と思いながら、下をよく見ました。
死体は有り得ない方向に足を曲げ、背中から背骨が飛び出し、頭からは脳が出て・・・。
とにかく醜い状態でした。
血生臭いニオイと、何か焦げた様なニオイもしました。
下のニオイが届くはずもないのに。
「アレは数分後の私!?」
そう思い、「あんな姿になるなら止めよ・・・」と自宅に帰りました。
帰ると母が、「おかえり。間に合ったね」と言いながら頭を撫でてくれました。
母は何か知っている様子でしたが、何も語りませんでした。
その後、職場いじめは急激に軽度化すると同時に私の仕事が認められ、味方や友達も出来、しばらくしてから円満退職しました。
今でも、私が飛び降りるより先に死体になっていた『私』の正体は分かりません。
ですが、早まって自殺した私の姿を見たおかげで、今も私は生きていられます。
(終)