死期が迫っているとツカイが現れる
これは、祖父から聞いた話。
祖父がまだ若い頃、『ツカイ』と呼ばれる妖怪がいたらしい。
顔は人間っぽく、真っ白で尻尾も無い。
体毛は短く、二足歩行もする。
私は多分アルビノ種の猿なんだろうと思っているが、祖父はそれを否定する。
なぜなら、“ツカイが現れると死期を示唆する”というのが地元での言い伝えだった事と、戸締まりをしているのにもかかわらず家に安々と侵入して来るところ、そして牙がある事から、そう考えられるらしい。
ツカイが死んだ!?
ツカイは朝方に出没する事が多く、5時くらいに目覚めると、じっと枕元でこちらを眺めている。
ツカイを家で見かけた場合は果物を差し出すのが習わしらしく、当時は高級であったミカンやリンゴやバナナなどを差し出し、「帰ってください」とお願いをする。
ある時、祖父と血が繋がっていない弟が、祖父が仕事で大怪我をしたという噂を聞いて家に泊まりに来たことがあったという。
そしてその夜、祖父の弟がツカイに噛み付かれ、ツカイを殺してしまったんだそう。
それ以降、ツカイは出なくなり、祖父の弟もその時は何事もなかった。
だが、「ツカイが死んだ」という噂が広がり、地元は大混乱した。
ツカイに命を救われた恩があるという人もいれば、ツカイに母を殺されたという人もいる。
祖父自身も、脳腫瘍を患っていたと知らなかった母を病院へ連れて行って延命できた恩がある。
しかし結局、迫害を受けて引っ越しを余儀なくされた祖父は、弟の家へ行くことになった。
関連があるかは分からないが、それから程なくして弟に白斑ができるようになった。※白斑(はくはん)とは、一部の皮膚が白くなってしまう病気。
命に別状はないらしいが、90歳を越えた今でも白斑は残っている。
ちなみに場所は、兵庫県美方郡。
あとがき
件の妖怪は『ぬらりひょん』か?※リンク先はWikipedia
良い者でも悪い者でもなく、ただ死期の近い人の元に現れる者か?
祖父の弟さんが次のツカイになるのだろうか?
もしかすると、あの世からの使いの者かもしれない。
(終)