自分だけの秘密の場所で見つけたもの
これは、俺が中学生の時の体験話。
当時の俺は多少のサボり癖があり、また授業をサボる時は『ココ!』というような秘密の場所があった。
通っていた中学校は結構な山の上にあって、辺りは林だらけだったので、学校から少し登った辺りを自分だけの秘密の場所にしていた。
そこは石垣のすぐ下だったのだが、その石垣の石の中の一つが、どう見ても“女の人の顔”の形をしていた。(石垣と言っても、白いブロックを積み重ねて作ったようなもの)
よく人面岩とか人面○○とか言うが、そんな感じではなくて、明らかに人の手で彫られたような感じに思えた。
それに、彫ってあるというよりは他の石と比べてその顔の部分だけが出っ張っていたので、浮き上がっているように見える、という方が正しいのかもしれない。
その石の顔だが、なんと言うのか、結構な美人だった。
ただ、彫刻の上手い人が作ったとも思えないし、髪型も少し古臭い。
こういうのがあると普通は少し気味悪いかもしれないが、他に比べてそこだけ日当たりが良かったので、俺は別段気にすることなく、そこを休憩所として使っていた。
そして、中学3年のある日のこと。
この頃はもうサボりは止めていたのだが、ふと休みたくなった。
昼休みに、その秘密の場所に向かった。
久しぶりに来たのもあってか、石垣の女の人の顔がすごく汚れていた。
鳥の糞らしきものが付いていたり・・・。
見た目にも気持ち悪いので、持っていたポケットティッシュでゴシゴシと顔を拭いてあげた。
ただ、結構な日が経っているらしく、なかなか汚れが取れない。
なので、ティッシュをもう2~3枚ほど使って力一杯にゴシゴシしてみると、石垣にガッチリと嵌っているはずのその石がグラグラしている。
何だろう?と思ってよく見てみると、浮き上がっている顔の両側面がちょうど指が引っ掛けられそうな感じになっていることに気づいた。
直後、好奇心から、そこに指を引っ掛けて顔の石を引っこ抜いた。
石は思ったより奥行きがなくて、引っこ抜いた奥の方は空洞になっていた。
中を覗くと、質素な”指輪”と綺麗に折り畳まれた”白いハンカチ”が入っていた。
ハンカチには文字が書いてある。
『ずっと、一緒に・・・』
そんな感じのことが書いてあったが、滲んでいるせいもあり、ほとんど読み取れなかった。
そして指輪を手に取ってみようと思った時、指輪のすぐ近くに何かが落ちていることに気づいた。
確かなことはわからないが、何かの“小さな骨”だったと思う。
指輪との位置関係から嫌な想像をしてしまった俺は、ハンカチも石も全てを元に戻して、そのまま教室へと戻った。
結局、あの場所の話は誰にも話さずに卒業してしまった。
それからだいぶ経つが、今でもほんのり気になっている。
(終)