お隣さんの家にいる無愛想な猫が
これは、隣の家にいる猫の話。
名前をキクという。
キクはいつもそこん家の婆ちゃんに、畑へ行くにも寄り合いへ行くにもくっ付いていた。
でもキクは婆ちゃん以外には激しく無愛想で、他の家族にすらほとんど懐かないほど。
ある日、その婆ちゃんが突然亡くなってしまった。
それからはしばらくキクを見なかったけれど、ある晩に自販機でジュースでも買いに行こうと外へ出たら、あの無愛想なキクが擦り寄ってきた。
こんなのは初めてだった。
「婆ちゃんが死んで弱くなったのかキク?」
しばらく構ってやって、そしてバイバイしようと思ったけれど、キクは何処までも付いてきて離れてくれない。
とうとう家の中まで付いてきたので、胸が痛んだけれど締め出した。
しばらく玄関の外で鳴いていた。
「ごめんよ・・・」
翌朝、学校へ行こうと玄関を開けたら、キクが飛び付いてきた。
隣にいた母がそれを見ていて、「たまげたねえ!この無愛想が」と笑っている。
他の人間には相変わらず無愛想らしい。
そんな出来事を学校で話したら、友達いわく「あんた婆ちゃん背負ってるんじゃないの?こわ~い」と。
キクは今も私にべったり。
いつも縁側に可愛く前足をかけて私を見ている。
(終)