夜になると泣き声や騒音がする団地にて
これは、2005年頃の体験話です。
私たち家族は、田舎から都会の団地に引っ越してきました。
北側の部屋の窓には、落下防止のための柵がありました。
その柵は他の部屋とも繋がっているらしく、離れた部屋で柵にぶつかった音がよく響いてきました。
夜になると下の方の階に赤ちゃんがいるらしく、泣き声が聞こえてきたり、柵に何かがぶつかる音がします。
ガーンガーンガーンと響いてくるのです。
最初の頃は我慢していましたが、毎日聞こえてくるので次第にイライラするようになりました。
「一言、文句を言ってやりたい。文句は言えなくても、どこの家がガンガン叩いてるのか調べてやる」
そう思い、私は行動に出たのです。
音は夜11時頃に聞こえるので、その時間帯を狙って、窓を開けて見ていました。
ガーンガーンガーン、その日も聞こえてきました。
私は窓から顔を出し、キョロキョロと辺りを確認していると、3つ右隣の部屋の窓の外に水色のボールのようなものが垂れ下がっていました。
子供がボールで遊んでいるのかと思って見ていたのですが、どうも違うみたいです。
水色のボールは、くるりと向きを変えました。
赤ちゃんでした。
私の頭の中は、目にしている状況が理解できませんでした。
そして赤ちゃんは、無表情で壁伝いに私たちの部屋の方へ移動してきました。
ヤバいと思い、急いで窓を閉めました。
鍵をかけ、カーテンを閉めると、街灯の明かりで赤ちゃんの影がうっすらと窓の前にいるのがわかります。
しばらくじっとしていた後、もと来た方へ戻って行きました。
後で聞いた噂では、私たちが引っ越してくる少し前に、3つ右隣の部屋に住んでいたご家族の子供が亡くなったそうです。
事故として処理されたようですが、虐待だったのではないのかとの噂です。
(終)