夜な夜な怪奇なことが起きるカラオケ店

カラオケ店

 

これは、最近までバイトをしていたカラオケ店での話。

 

店が郊外にあるせいか、平日の深夜ともなると客足がほとんどなく、その日は2時頃に最後の一組も帰ってしまい、店内には俺一人きり。

 

閉めの作業もほとんど終わらせ、ただただボーっとしていると、突然部屋からのコール音が鳴った。

 

スタッフ控え室の壁には部屋番号が書かれたパネルが備え付けてあり、また発信された部屋番号が点滅するので、一目でどこからの発信かわかるようになっている。

 

ただその時に点滅していたのは、”部屋番号が存在しない”一番右下にあった予備パネル。

 

怖くて立ち尽くしていると、コール音は30秒ほどで切れた。

 

俺はビクビクしながらも、残っていた業務の厨房掃除を急いでしていたところ、今度は無人のはずの受付カウンターから男の野太い声がして、もう半泣き状態に。

 

後日、店長に冗談っぽくこの夜の出来事を話してみると、他にも奇妙な体験をしている人がいるらしく、中には11番の部屋に入れないと言う人もいたと。

 

確かにその部屋だけ、床が浸水したかのように捲り上がっていてモップが掛け難いとは思っていたが、何か関係あったのか…。

 

他にも、誰もいないはずの部屋から壁を引っ掻くような音がしたり、夜になると自動ドアが勝手に開閉したり、挙句にはお客さんにも『心霊カラオケ店』呼ばわりされたり。

 

そんなある日、新人バイトの女性と社員が夜勤のシフトで入った時のこと。

 

1階の奥にある、普段は鍵が掛かっている“物置部屋から誰かが走り回るような音がした”そうで、新人の女性は泣いて仕事にならなくなったという。

 

その女性は次の日に辞めてしまい、店長もさすがにヤバいと思ったのか、御祓いを依頼した。

 

そして、足音がしたという物置部屋には盛り塩やら御札が貼られ、そこはそれ以降は開かずの間になった。

 

結果、御祓いを行ってからは奇妙な現象も収まり、すっかり心霊騒動は落ち着いた。

 

それから日が過ぎ、いよいよ俺も辞める前の最後の勤務の日、偶然にも店長とシフトが被った。

 

色々と思い出話をしていたところ、この店の怪現象の話になった。

 

「あの夜、マジ怖くて本気で辞めようと思いましたよ」

 

店長「でも辞めないでいてくれて助かったよ。もしあの時に辞められていたら、お前の代わりなんて俺ぐらいだもんな」

 

「夜勤もやって次の日も昼のシフトとか地獄ですもんね…」

 

その後も雑談を続けていたら、店長が少し真面目な顔をして、とんでもないことをさらっと言った。

 

店長「あ、お前にだけは話しとくわ。他の人には絶対に言うなよ。前にここでお店やっていた店長、店の目の前で死んでるんだよね

 

「やめてくださいよ、もう…。新しく入ってきたバイトには絶対そういうこと言ったらダメですからね」

 

いつも冗談ばかり言う人だったので軽く受け流したが、本当のところはどうだったのだろうか。

 

(終)

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