深夜のバイト中に変死した友人
友人が変死した。
就職浪人中だった友人(以下A)は
コンビニでバイトをしていたが、
ある日の深夜の勤務中に、
そのコンビニの駐車場脇で死亡した。
原因は心拍停止だったが、
生前に心臓の病気も一切無かった為、
解剖されたという。
その結果・・・
殴られた等の外傷は一切無く、
脳にも障害は無く、
死に至るような薬物等も検出されなかった。
過労や急激な温度変化も疑われたが、
そういう状況でもなかった。
また、自殺する理由も無い。
だけど俺は・・・
俺だけはAが死亡した原因を知っている。
この世には説明の付かない事もある・・・
半月ほど前の深夜、
Aが死亡していた駐車場脇では、
17歳の女子高生(以下K)が数人の少年に
レイプされる事件があった。
Kと犯行グループの少年達は、
高校は別だが顔見知りだったらしい。
Kが暴行されている時、
そのコンビニでレジを打っていたのがAだった。
Kの悲鳴を聞いたAは駐車場に出たが、
「友達が悪酔いしちゃったんで
介抱してるんです~」
という少年達の言い訳を信じ、
そのまま放置した。
Kは暴行された後、
警察に全てを話したらしく、
Aは警察やK本人から
その時の状況をしつこく聞かれ、
特にKからは激しく罵(ののし)られた。
Kは暴行を受ける直前、
Aのバイトしていたコンビニに
逃げ込もうとしたが、
中へ入る時に少年達に引きずり戻され、
腹を数発殴られ声を出せない状況だった。
しかし、Aにしてみれば、
過去にKと少年達が一緒にいるところを
何度か見ていたので、
少年達の言い訳を鵜呑みにしても
止むを得なかった。
Kはこの暴行を苦にして、
数日後に自殺してしまった。
そして、
Aが変死する数時間前の深夜1時頃、
俺はそのコンビニで勤務中のAと
携帯で会話をしていた。
A「今さ、
店の入り口のドア越しに女が居るんだけど、
様子がおかしいんだよ」
俺「痴呆症の老人とかじゃないの?」
A「それがさ、Kにソックリなんだよ」
俺「おいおい、Kは死んだんだぞ!」
A「それがおかしいんだよ。
Kの声がすぐ耳元で聞こえるんだ」
俺「ちょっと待てって!!
じゃあ、幽霊が来たっていうのか?
ノイローゼだよ、幻聴だよ」
A「それとさ・・・その女、
ドアのすぐ近くに立ってるのに
ドアが開かないんだよ。
あそこに立ったらドアが開くはずなのに」
俺「ふう・・・幻聴に幻覚かよ。
この前のKの事件で
ノイローゼになってるんだよ。
明日、病院に行った方がいいぞ」
A「幻覚でも幻聴でも無いって。
もう一人のバイトが遅刻していて、
今は俺一人なんだよ。
飯奢るからさ、
今からここに来てくれないか?」
俺「今、夜中の1時だぜ?
勘弁してくれよ~」
A「あっ!またKの声が聞こえてきた。
何で助けてくれなかったのって言ってる。
絶対に幻聴じゃないって!」
俺「・・・じゃあさ、
思い切ってドアの外に出て見てみろよ。
絶対に誰も居ないから」
A「分かった。
外に出るから電話を切らないでくれよ」
店の自動ドアの開く音とチャイムが鳴り、
その数秒後・・・
A「許してくれ!!
あの時は君が酔って暴れてたと
思い込まされたんだよ!
本当に!!
・・・・・・うぐぅ」
ここでAの声は途切れたが、
携帯は通話中のままだった。
俺はさすがに心配になり、
バイクでAのいるコンビニに向かった。
しかし、俺が着いた時には、
Aは既に駐車場脇で死亡していた。
警察にはAとの会話の内容は、
世間話だったと誤魔化した。
たとえ真実を話しても、
誰も信じるはずがないから。
(終)
こういうの見る度に思うんだよ。
『祟る相手の順番間違えてませんか?』って。