足が綺麗な女性は使わない方がいい

トイレ案内板

 

これは、公衆トイレでの恐怖体験談です。

 

夜勤から帰る途中、突然お腹が痛くなりました。

 

暗い中、近くのスポーツ公園の奥の雑木林にあるトイレに駆け込みました。

 

しかし、男子トイレに紙がなかったのです。

 

僕は、まあ夜中だし誰もいないからいいや…と思い、女子トイレに入りました。

 

そうして用を足していると、カッカッと足音が聞こえました。

 

(ヤバい!誰か来たか?こんなところを見られたら変質者と思われる)

 

僕は、息を潜めました。

 

カッカッ…。

 

足音は、だんだんとこちらへ近づいて来ます。

 

カッカッカッカッ…。

 

カッカッカッカッカッカッ…。

 

そして足音は、僕が入っている個室の前で止まりました。

 

(もしかして管理人か警察かも。ここは正直に事情を話そう)

 

「すみません、男子トイレに紙がなかったのでこっちを使っています」

 

返事はありません。

 

ただ、ドアの向こうから無線音のようなものが聞こえてきました。

 

「・・あ・・・・・・・い・・」

 

何をしているのだろう?と思った僕は、ドアの下の隙間から覗き込んでみると、裸足の女性の足が見えました。

 

しかも、なぜか片足だけ。

 

(え!?何が起こってるの?)

 

混乱していると、無線音のような声がだんだんと大きくなってきました。

 

「・・あ・・・・・・・・・・だ・い・・」

 

「・・あ・・・し・・・・・だ・・い・」

 

よく聞くと、女性が唸っているような声でした。

 

「・・あし・・・ちょう・・・だい・・・」

 

(足ちょうだい?)

 

言葉が聞き取れた途端、下の隙間からにゅっと綺麗な女性の手が伸びてきて、僕の足を掴みました。

 

それは、重くてひんやりとした空気に包まれたような感覚でした。

 

(あわわわわ・・・・。僕の足どうなってしまうのだろう)

 

僕は恐怖で固まってしまいましたが、弛むところは弛んでしまい、駄々漏れ状態に…。

 

女性の手はしばらく僕の足を掴んでいましたが、僕の足が毛深く汚かったせいか、「こんな足イラネ!」と言わんばかりに手を離し、すぅっと隙間から消えていきました。

 

僕はそのまま気を失い、朝までトイレで寝ていたようです。

 

後日、地元の人から聞いた話によれば、過去にそのスポーツ公園前の道路で女性が車に撥ねられたことがあったそうです。

 

一命は取り留めたのですが、“足を一本、失ってしまった”とのことでした。

 

その女性はモデルをしていたそうで、そのことで追い詰められたのか、公園の奥の雑木林、そう、僕が用を足していたトイレの真裏の松の木で首を吊って自殺してしまったと。

 

それ以来、その女子トイレで一人で用を足していると、「あしちょうだい」と言って出て来るのだとか。

 

ただ、その女性が気に入る足がないのか、まだ足を取られた人はいないそうです。

 

僕はこう思いました。

 

足が綺麗な女性は、決して一人でそのトイレを使わない方がいいですよ。

 

(終)

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