どうしても人に話してみたくなったので

海

 

信じてもらえないかもしれないが、実際に体験した話。

 

私は高校生くらいの頃から、よく妖怪や怪物が出てきたりする変な夢を見る。

 

他にも予知夢的なものも。

 

ある時のこと、何者から殺されそうになり、殺そうとしてきた相手を返り討ちにして殺す、という夢を3日も続けて見た。

 

特に3日目に見た夢が鮮明過ぎて今でもよく覚えている。

 

綺麗な遠浅の青い海で、12歳くらいの赤い水着姿の女の子が海水浴をしていた。

 

その様子を、砂浜の方から父親らしき人が見守っている。

 

その男性は砂浜でバーベキューの準備をしているようで、ほんの少しの間だけ女の子から目を離した。

 

その隙に、紺碧の沖合いの方から物凄いスピードで何かが女の子に近寄ってきた。※紺碧(こんぺき)=やや黒みを帯びた青色

 

ソレはあっという間に泳いでいた女の子に近付いて、その子の首を切り裂いた。

 

何を使って切り裂いたのかは、私が見ていた角度からは見えなかった。

 

首を斬られた女の子は当然死んでしまったようで、力無く波間に浮かんで血が辺りの海を赤く染め始めた。

 

その時、浜辺にいた男性がやっと海での異変に気付き、血相を変えて海に飛び込み、女の子のところに近寄っていった。

 

その男性の腕に抱かれた女の子は痛々しい傷跡をさらし、首と体が2つに斬られていた。

 

悲しそうにうな垂れる男性。

 

ここで夢の場面が変わり、沈痛な様子の喪服の一団の中に私はいた。

 

そして、これはあの女の子の葬式なんだということを知っていた。

 

喪服の一団の中には、あの時に浜辺にいた男性もおり、女の子の遺影を持った祖父母らしき人もいた。

 

この時にはもう、葬儀は終わっていたようだった。

 

ただ、この喪服の一団は何かの目的をもって長い葬列を作り、どこかの山中の道を登っていく。

 

私はその後を付いていった。

 

葬列に付いていくと、やがて海に面した岸壁に出た。

 

この海は女の子が殺された海だ。

 

なぜか直感的にわかった。

 

岸壁の右側には波が浸食して出来た回廊のような薄暗い洞窟があり、葬列はその中に入っていく。

 

私も当然のように付いていき、中に入った。

 

洞窟の中には無数に石が積まれた小山が沢山あり、赤い前掛けをした地蔵がいて、まるで賽の河原のようになっていた。

 

喪服の一団が幼くして殺された女の子の無念の為にここにやってきたことが、私にはわかった。

 

その時、おもむろに女の子の遺影を持ったお祖母さんが私に振り返り、こう言った。

 

「あの子の無念を絶対に晴らして下さいね」

 

私はその為に呼ばれたんだということを、夢の中の私は認識していて、お祖母さんの頼みに強く頷いた。

 

父親らしき男性も、沈痛な眼差しで私を見ていた。

 

また場面が変わり、今度は海に浮かぶ小さな漁船の上に私はいた。

 

海女さんらしき女の人と一緒で、「怪物はこの沖にいるから」と彼女はそう言って、私を沖合いに連れて行こうとする。

 

私は女の子の遺族に頼まれた通り、これから怪物退治に行かなくてはいけないことになっていた。

 

夢の中なのに、緊張感で気持ちが高ぶっていたと思う。

 

そして、手には小さなナイフを握りしめていた。

 

しばらく漁船で進んだ頃、沖合いの青い海の中から黒い影が見えた。

 

ソレが、こちらにどんどん迫ってくる。

 

物凄いスピードだった。

 

私はナイフを握りしめ、迫ってくる影に向かって構えた。

 

正直、こんな小さなナイフが武器では心許なかったと感じていた。

 

ソレが近付いてくるにつれ、ソレの正体がようやくわかった。

 

上半身が髪の長い人間の女で、下半身が蛇のような体、そして両腕がハサミの怪物。

 

海の怪物とはコイツのことだな、そう冷静に考えていた。

 

ソレは私に狙いを定めながら、鎌首をもたげて迫ってきた。

 

漁船の縁近くまでやってきた時、私は胸の前で構えていたナイフをソレに目がけて振り下ろした。

 

ナイフが深々とその女の首に刺さったのが見て取れた。

 

女は口をパクつかせると、海の中に倒れ込んだ。

 

怪物女は呆気なく死んだようだった。

 

これで終わった…と思った瞬間、私は目が覚めた。

 

夢の中でナイフを構えていた右手は、起きた時には畳の上に振り下ろされていた。

 

この夢の話はこれで終わりになるが、この奇妙な夢に平行するように現実ではこんなことが起きていた。

 

当時、私の姉はカナダの大学に留学していた。

 

その姉が暮らしていたアパートが酷い幽霊アパートで、毎日お経をあげないと電球がパンッと割れ飛ぶような霊障に悩まされていたそうで。

 

それに通っていた大学も曰く付きで、インディアンの子供を無理やり親元から拉致してきて、白人化させる教育を施す為に造られた建物をそのまま転用した大学だった。

 

親元から離されたストレスや慣れない場所に放り込まれたストレスで、子供がたくさん亡くなったという。

 

そういうこともあってか、子供の幽霊の目撃談が多々あったとか。

 

もっと恐ろしいのは、この政策に関する法律が1981年まで存在していたことだが。

 

そんな場所に住んでいた姉がある日、首に腫瘍ができた。

 

私は怪物女の首を刺した夢のことが頭を過ったが、まさかね…と思っていた。

 

腫瘍自体は大したことない代物で、手術でどうにかなった。

 

その後、霊能者の会う機会があったので、この時のことを聞いてみた。

 

すると、このようなことを言われた。

 

「怪物女は私の方に取り憑こうとしていたが、3日返り討ちに遭って出来なかった。仕方なくカナダに住む姉に取り憑いた。腫瘍はその結果」。

 

続けて、「姉が住んでいる幽霊アパートは悪霊の溜まり場になっていて、それも良くなかった。あなたは夢で霊体験をする人だから今後も夢に注意するように」と。

 

最後に付け加えるように、「あなたは言霊があるから文章では書かないように。書くとよくないものを呼び寄せる」とも。

 

ここまで読まれたあなたの所に何かがやってきたら私のせいかもしれないが、どうしても人に話してみたくなったのでご了承のほど。

 

(終)

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