隣家のおばあさんと毒草の怪

スズラン

 

私の旦那は私の実家に同居している、いわゆるマスオさん状態。

 

これは、祖母とまだ同居していた時の話。

 

隣家のおばあさんがとても嫌な人だった。

 

ゴミが飛んできた、音がうるさいなど、心当たりのない文句をよく言われた。

 

ただ、うちが一番困っていたことは、隣の敷地に生える雑草。

 

なぜなら息子がまだ小さくて、白い花の『毒草』が気がかりだったから。

 

でもおばあさんは、その毒草だけは絶対に刈ってくれなかった。

 

私は両親を早くに亡くし、祖母と私、旦那と息子の4人で暮らしていた。

 

旦那の仕事上、職場の近くに越したかったけれど、祖母を一人残すことが心配だった。

 

祖母は「心配いらない。私は一人でもここに居る」と言っていたけれど、それはできない。

 

そんな日々の中、隣家のおばあさんが突然亡くなった。

 

見つけたのは自治会の人で、電話をしても出ないから訪ねたところ、玄関先で倒れていたという。

 

うちは一番近くに住んでいたせいか、警察から嫌味っぽく色々と聞かれた。

 

なんでも、隣家のおばあさんは身寄りがなかったらしい。

 

葬式の時、自治会の人に毒草の処分をお願いしたことを今も覚えている。

 

その後すぐに祖母がおかしくなった。

 

空き家になった隣のおばあさんの家に出入りし始めた。

 

隣家の敷地でうろうろしていたり、食事中に「この家は音がうるさいね」と普段からは想像もしないことを言う。

 

そんな日が1週間ほど続いた後、私と旦那と息子の3人が食事中に激しい吐き気に襲われた。

 

どうにか自力で車を運転して病院へ行き、処置をしてもらった。

 

毒草による食中毒。

 

息子は痙攣状態だった。

 

祖母は食中毒にならなかった。

 

私たちが車で病院へ行く時、「私は行かない」と言って祖母は私たちを見送った。

 

車に乗った私たちの状態を見て、「明日からもご飯作って待ってる」と場違いに笑った祖母が、今思うと変だった。

 

入院中に電話をする度、祖母は「何でも出来るからご飯して待ってる」と言ったけれど、変にズレた感じを受けた。

 

退院すると、玄関で祖母が冷たくなっていた。

 

死因は心臓麻痺と言われたけれど、原因は不明で食中毒でもなかった。

 

そしておかしなことに、祖母が亡くなった日は私が回復して最初に病院から電話した頃らしいけれど、その後に何度も電話で話している。

 

私は誰と話していたのだろう?

 

玄関で倒れている祖母を最初に見たのは私のはず。

 

ただ、その時のことが今でもよく思い出せない。

 

ぼんやり覚えていることは、祖母が着たこともない服を着ていたこと。

 

それは、隣家のおばあさんがよく着ていた服だった。

 

(終)

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