葬儀の晩に起きた不可解な出来事
これは、不可解な体験をした時の話。
7年前、結構世話になっていた祖父の兄(当時89歳)が亡くなった。
死因は老衰。
特に病気もなかったらしく、安らかな眠りについたという感じだったそう。
亡くなった次の日、早速葬儀が執り行われた。
葬儀には私を含め、ほとんどの親戚一同が参列した。
ただ、亡くなった祖父の兄の妻(当時88歳)だけが葬儀には参列しなかった。
亡骸が火葬場に向けて出発し、当時まだ若かった私は留守番に。
ふと、婆ちゃん(祖父の兄の妻)がいなかったことに気付き、様子を見に行ってみた。
すると、親戚の人と一緒に別の部屋の隅で何かしているのを見つけた。
そこに居た親戚に聞いたところ、亡くなった日からずっとこの場所で泣いていたという。
葬儀に出ようと言っても、泣きながら「足が痛いから行かない」としか言わなかったそうで。(婆ちゃんは足が悪くて一人で歩くのは困難だった)
少し痴呆もあり、いくら言っても聞かないのでそのままにしておいた、とのこと。
やがて親戚一同が戻ってきた。
次の日が日曜日ということもあり、祖父の家に泊まることに。
ちなみに、祖父の家と祖父の兄の家は地続きで、祖父の家の隣に兄の家がある。
その夜のこと。
夕飯も食べ終えて一息ついていたところに、電話の呼び鈴が鳴った。
親戚の一人が受話器を取る。
「もしもし?」
私は、その様子の一部始終を近くで見ていた。
すると突然、「なぁ、この電話、何か変だぞ?」と言って、私に受話器を差し出した。
私は受話口に耳を当ててみると、「ガ・・・ガロロロロ・・・ガロロ・・・」と、何とも言いようがない普段とは違う機械音がしていた。
普通なら「ツー」とか「ツー、ツー」みたいな音だが、それとは全く違う。
「何なんだろう、これ?」
「イタズラ電話じゃねぇのか?」
とりあえず受話器を元に戻した。
するとまた数分後、電話の呼び鈴が鳴った。
「またイタズラか?」
そう思い、何か言ってやろうと今度は私が受話器を取った。
「もしもし?」
「ガガガガー・・・ガー・・・ガロロロロ・・・」
気味が悪くなり、急いで電話を切った。
「何だった?」
「またさっきと同じ・・・」
「なんだか気味が悪いな」
その後は電話がかかってくることはなかったが、気味が悪かったのでその日はすぐに布団に包まり、就寝した。
しかし深夜2時頃、周りの慌しい声に起こされた。
こんな時間に何だよと思いつつ、布団から出る。
近くにいた母に何事かと尋ねた。
すると、「婆ちゃんが家から居なくなったのよ」と言う。
家中が慌しかったのは、それが原因だった。
親戚の人が寝ようとした時に、婆ちゃんのことが気になって様子を見に行ったところ、既にもぬけの殻だったそうで。
私も探すよと母に言ったが、「とりあえずもう遅いから寝なさい」と言われ、渋々布団に戻った。
そして翌朝、9時頃に目が覚めた。
昨夜のことが気になり、親戚を探す。
だが、誰も居ない。
外に出ると、母がちょうど向こうの家(兄の家)から戻って来るところだった。
「どうだった?見つかった?」
「う~ん、とりあえずね・・・」
「ん?とりあえずって?」
真相は、こうであった。
私が寝た後、親戚一同、警察、地元の消防団で辺り一体を捜索したそうで。
だが一向に見つからず、途方に暮れていた。
そもそも、婆ちゃんは足が悪いから出歩けるはずがないのに、と。
そんなことをみんなで話していると、祖父が直感で「もしかして…」と、とある場所が思い浮かんだという。
その場所は、家から1キロメートル以上も離れた『堤』だった。※堤(つつみ)=川や池などの水があふれ出ないように、岸に土を高く築き上げたもの。土手。
祖父と警察官1名、それに消防団員の数名でその堤に行ってみたと。
その場所はとてつもない山道の先にあり、普通の人が歩くにも大変な場所。
そこには巨大な沼か池のようなものがあり、その真ん中に朽ち果てた古木が立っている。
そして祖父の直感通り、婆ちゃんの遺体はその朽木に引っかかっていた。
結局、祖父が警察やら何やらに話をつけ、ほとんど公にはしなかった。
私も死因は不明と聞かされただけで、詳しいことは聞かされていない。
その後に警察が周辺を捜索したそうだが、結局は婆ちゃんがどうやってそこに行き着けたのかは不明だったという。
祖父の兄の葬儀が行なわれた2日後、また葬儀が行なわれたのは紛れもない事実である。
(終)