私の周りで起きている数々の異変
私自身はその類のものを一切見たことはないが、周りでは…。
大学生の頃に住んでいたアパートでは、隣室の新しい住人が“私の部屋との壁から幽霊が出てくる”とか言い出し、おかしくなって出ていった。
卒業して就職し、社員寮に入っていた時には、下の階の住人が突然ノイローゼになり始めた。
なんでも、“上の私の部屋から形になっていない人影やら歪んだ顔が出てくる”と言って、結局は会社を辞めていった。
その部屋の次の住人は3年勤めていたが、“毎日のように天井から変なものが湧いてきてもう嫌になった”と言って去っていった。
会社は一体何なんだ?という反応だったが、続けてこんな事案は何かおかしいんじゃないかと、下の部屋を立ち入り禁止にした。
それから1ヶ月もせずに、今度は私の部屋の右隣に住む先輩が、“隣の部屋側の壁からたまに血が流れ落ちる”と言って去っていった。
先輩が去った後、徐々に会社での私を見る目が怪しい感じになっていったかと思えば、社員寮や何処も場所は関係なく、社員の多くが変なものを見たりするようになった。
最終的には私が入社してからが原因とされて…。
結局、職場の長が「会社を辞めてくれ」と床に額を擦り付けるように嘆願してきたので、会社都合退職の分で増額してもらった退職金で納得して辞めることに。
ただ、次の職場でもその次の職場でも同じようなことが起きた。
さすがにおかしいと思って霊媒師をあたるも、どいつもこいつも嘘ばかり。
ある人は事故後のような無残な姿の女性が見えるとか、ある人は着物を着た女性が引っ付いているとか言う。
誰一人として同じことを言う人がいないので、詐欺師ばかりだな、なんて思っていた。
そんなある日のこと、電車に乗ろうとした瞬間、私と目が合うや真っ青な顔をして下りていったおばさんがいたので、「もしや?!」と思って声をかけてみた。
すると、おばさんはこう言った。
「幽霊の大名行列かと思うほどの大集団がやってきたと思ったら、その中心があなただった」
詳しく聞いてみると、集団の大半は女性だが、なよなよした男性もいるとのこと。
私はおばさんに頼み込み、どうにか月に1回、1時間1万円で視てもらえることにしてから2年。
やっとたどりついた結論は『モテ期』。
この調子で生きている女性に振り向いてもらえたらいいのだが、そっちはとんとダメな模様で…。
(終)