門の向こうにあった不思議な世界
これは、私が小学生の頃に体験した話。
通学路の途中に、鉄柵風の門構えをした家があった。
ある日、珍しく一人で帰っていた時にそこを通ると、門の辺りに女の子が立っていた。
ニコニコしていたので話しかけると、同じ小学校に通う子だった。
女の子から「中で遊ぼう」と言われ、門を通って小道を通り抜けて歩いていくと、そこは綺麗な庭。
ゆりかご式のブランコや、鉄棒や滑り台もあって、花もたくさん植えてある。
家は古びてはいるが洋風っぽい造りの、日本ではないような雰囲気がとても素敵だった。
まるで何かの物語の中の場所に来たようで、やたらと興奮してハイテンションで遊び狂った。
ただ、家の人はいないらしくて、家の中には入らなかった。
すっかりその子と仲良くなり、「また明日も遊ぼうね」と約束をして帰った。
次の日、学校でその子を探してみたけれど、いなかった。
学年も違うし、何かの間違いか、はたまた違う学校なのに嘘をついていたのかな?なんで?などと思いながらも、またあの庭で一緒に遊びたくて、しばらくの間は毎日その門の前を愛おしそうに眺めながら通っていた。
一ヶ月くらい過ぎた頃、あの日以来いつまで経っても会えないので、思い切って門の中に入って呼んでみることに。
私は「すみませーん」と言いながら、門を開けて小道を入っていくと、何か雰囲気が違った。
庭まで辿り着くと、そこはまるで廃墟のよう。
花壇の跡のような場所には花ひとつない。
廃れた家に、ボロボロに錆びた遊具の数々。
とても人が住んでいるとは思えない感じだった。
何か怖くなり走って家に帰ったけれど、子供の頭で「引っ越したのかな?」と思った。
だけど、たった一ヶ月くらいであんなに廃れるのかな、と不思議な感じもした。
しばらくして、近所の叔母が遊びに来た時に話してみると、「あそこは十年以上も空き家なのよ」と言われて、何が何だかわからなくなり、今でも不思議で仕方ない。
(終)